(絵:100%ORANGE)
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 30代のはじめ、なんのあてもなく訪れた神奈川県の三浦半島、三崎の下町で、まるいち魚店に出会った。

 ここに毎日通えたらきっと幸せになれる、との予感があった。翌月、浅草の手ぬぐいを持って引っ越しのあいさつに行ったら、店主の宣さんが「おめえ、バカじゃねえか。ホントに来たんだ」と大笑いで迎えてくれた。

 店先はまるでキャンバスだ。キンメにサバ、アジ、メトイカ、トコブシにナマコ。魚たちは5分、10分ととどまっていない。宣さん、奥さんの美智世さん、息子の英さんの手で、その時々、もっとも見栄えのよい場所へ運ばれ、得意げにひれをはためかす。

 見た目ばかりではない。宣さんが市場から連れ帰った魚たちは、内側から、...

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