「プロジェクト・アエテルナ」のキム・デニス・スンミン監督
「プロジェクト・アエテルナ」のキム・デニス・スンミン監督

 第4回新潟国際アニメーション映画祭で新たに創設した中編コンペティション部門「Indie Box(インディー・ボックス)」に選ばれた「プロジェクト・アエテルナ」。近未来の架空都市を描き、「デジタル不死」がひとつのテーマになっている。韓国出身の若手監督・アニメーターのキム・デニス・スンミン氏に作品のこだわりを聞いた。(ライター・橋本安奈)

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──舞台は2050年と2100年の架空都市です。近すぎず、遠すぎない絶妙な時代設定だと思いました。

 その通りなんですよ。この作品では、かなり早い段階でSFの世界に観客を放り込むことになりますが、最初はもっと昔の時代にすることも考えていました。でも、観客が混乱するかなと思ってやめました。過剰なテクノロジーの発展による環境破壊など、既に私たちが直面している課題も描くことで、この世界にどこか「見覚えがある感じ」を持たせつつ、「近い未来」へ観客を連れていくことにしました。

──「不死」がひとつのテーマになっていますよね。

 僕は自分の作品ではいつも、存在とか生きる意味とか、そういう大きなテーマを扱うのが好きなんです。「不死を手に入れたい」という欲望は今でも一部の人が持っているかもしれませんが、人類最古の物語が生まれた頃からずっとある欲望だと思うんですね。たとえば、古代メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」にも書かれています。

──作品をつくるとき、よく歴史的な作品を参考にされるんですか。

 昔から古代史や古い物語に興味があり、作品の世界観をつくるときにそこから発想を得ることがあります。この作品の世界観はローマ神話に強く影響されています。ラテン語もたくさん出てきますし、狼がキャラクターなのもそうです。僕が引かれるのは、あれほど偉大な文明が、結局は崩壊したという事実なんです。この映画は、そういう「無常」みたいな感覚、つまり何も永遠には続かないという考えにも触れています。

「プロジェクト・アエテルナ」のキム・デニス・スンミン監督

──そこでなぜデジタルの力を使って不死を手に入れる「デジタル不死」というテーマに行き着いたのでしょう。

 タイムリー(今の時代にふさわしい)だけど、タイムレス(普遍的)なテーマを扱いたいと思ったんです。デジタルが発達する現代に近い未来で、もしデジタル上の世界で生き続けることができたら、それは何を意味するのか。僕の中で行き着いたのは、今この時代には「永遠に生きること」よりも、追究すべきもっと大事なことがあるよね、という感覚でした。人生は終わりがあるからこそ、意味のある贈り物になるという考えです。

──今年から本アニメーション映画祭に「Indie Box」という中編部門が新しくできましたが、短編や中編のアニメーションが持つ強みはなんでしょう?

 短編、中編は長編より難しいと言われることもあります。それは時間が非常に限られる中、物語を届けて観客の心をつかまなければならないからです。一方で、最大の強みは「実験できる幅」が大きいことだと思います。物語の内容も、表現方法も、とにかく新しいことを試す余地がたくさんある。そして、短い作品でも長編と同じくらい強いインパクトを与えられることだと思います。でも結局は長さが重要なのではなく、どの作品にも「物語にとってちょうどいい長さ」があるので、適切な尺で作品をつくればいいのだと思います。

──最後に、韓国のアニメーションシーンについて教えてください。

 韓国にはアメリカや日本のような大手のアニメーションスタジオはまだあまりないのですが、個人的に思うのは、一般的なアニメーションファンがものすごく増えていて国内外問わずさまざまなアニメが見られるようになってきたということです。インディペンデント系のアニメーションも人気になってきて、洗練された作品が近年生まれています。本作品は国からの支援も受けており、またほかのアニメーションクリエーターも同じように補助金を得て制作することができているので、光栄な状況だと感じています。

◎キム・デニス・スンミン 韓国とアメリカを拠点に活動する韓国人映画監督・アニメーター。ソウルとニュージャージーで育つ。幼少期から絵を描くことや物語を作ることに興味を持ち、映画やアニメーションを媒体として作品制作を始める。実存的なテーマと人間性の関係を探求することに深い関心を寄せ、緻密なキャラクター造形と世界観の構築を通して、想像力豊かで寓話的な物語を生み出す。ペンシルバニア大学で美術と映画学を専攻し、在学中から短編映画を監督。監督作品は「Short of the Week」や「Vimeo Staff Picks」、Gunpowder & SkyによるSF専門チャンネル「DUST」、そして130万回以上の再生数を記録した「Omeleto」など、著名なオンライン・プラットホームで紹介されたほか、世界各地の映画祭でも上映された。

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◆「プロジェクト・アエテルナ」

韓国/2024年/17分/監督:キム・デニス・スンミン

「プロジェクト・アエテルナ」©KIM Dennis Sungmin, KIAFA AniSEED

 都市で最も先進的な技術研究センターに勤める2匹の狼・ルーとステラは、デジタル技術による不死の実現を目前にしていた。しかし実験中、彼らはライバル技術企業を巻き込んだ予期せぬ陰謀に巻き込まれる。旅路の中でルーとステラは、驚くべき真実と人類の永遠の命への追求が持つ深い意味を暴いていく。彼らが発見した事実は、存在の理解と永遠を追い求める真の意味に疑問を投げかけるものだった。