戦争の犠牲者をこれ以上、増やしてはならない。世界経済への打撃は深刻の度を増している。停戦を恒久的な和平につなげたい。
米国とイランが即時停戦に合意した。仲介するパキスタンが発表した。米政府関係者によると、イスラエルも同意した。停戦が実現すれば、イラン攻撃が始まった2月28日以降、初めてだ。
トランプ米大統領は、エネルギー輸送の要衝、ホルムズ海峡の開放を条件にイラン攻撃を2週間停止すると表明した。イランは海峡の安全通航が2週間可能になるとしている。
合意直前、トランプ氏は海峡開放などの進展がなければ「全ての発電所と橋を4時間以内に破壊する」と警告した。イランは停戦を拒否していた。
重要なインフラが失われれば、市民の生命が脅かされる恐れもあった。事態の悪化をひとまず避けられたことは評価したい。
攻撃で米国は、イランの前最高指導者ハメネイ師を殺害したが、後継者のモジタバ師は反米強硬路線を継承、体制転換に失敗した。
米世論調査では、イラン攻撃への支持率が低迷し、11月の中間選挙ではトランプ氏と与党共和党への逆風となる可能性が高い。
一方、軍事力に劣るイランは周辺国のエネルギー施設を攻撃し、多くのタンカーが通過するホルムズ海峡を事実上封鎖した。
世界経済に打撃を与え、米イスラエルへの反感につなげようとする策は、国際社会から強い反発を受け、孤立を招いた。
停戦合意に際し、米イラン双方が勝利を宣言したが、そう受け取るのは困難だ。
両国は10日、パキスタンで交渉を開始する予定で、交渉期間は最長15日間だ。
イラン側は、イランが求めた侵略禁止やホルムズ海峡管理、ウラン濃縮容認を含む10項目を、米国が交渉の土台として受け入れたとしている。
イランはこれまでに2度、米国と核問題を巡る協議中に、米イスラエルから攻撃を受けた経緯がある。当事国間の不信感は根強いとみられ、行方は見通せない。
粘り強く、妥協点を見いだす努力をするべきである。
トランプ氏は合意前、「一つの文明全体が今夜滅ぶだろう」と交流サイト(SNS)に過激な投稿をして、イランを威嚇していた。
イスラエル軍はイランとの停戦後も、レバノンでは親イラン民兵組織ヒズボラに対する軍事作戦を継続すると発表した。
言葉と武力による攻撃を排し、和平に向き合うべきだ。
日本政府は国際社会と連携し、戦闘終結に向かいやすい環境をつくることが重要である。
エネルギー施設の復旧など、和平後に中東で何をできるかも検討するべきだろう。
