世界経済を混乱に陥れておきながら、一方的に勝利を強調した。身勝手極まりない。

 中東地域を不安定化させた米国の責任は重い。戦果を追うことなく、即時に攻撃を止めるべきだ。

 トランプ米大統領は1日、イラン情勢についてホワイトハウスで国民向けに演説し、イランの海軍と空軍を壊滅させ、圧倒的な勝利を収めたと主張した。

 今後2~3週間で「猛烈な攻撃をかける」とも語り、戦闘終結で合意できなければ、全ての発電所を攻撃すると表明した。

 だが、トランプ氏が語るべきは即時停戦である。

 米国とイスラエルが先制攻撃してから1カ月たった3月28日時点で既に、イランの死者は1900人以上に上り、中東一帯では3千人を超えている。

 トランプ氏は、イラン指導部の多くが死亡し「体制転換が起きた」とし、「核心的な戦略目標はほぼ達成しつつある」と演説した。

 軍事力による徹底的な破壊を自身の功績として誇るための演説だったといえる。

 一方、イラン側は、挙げられた成果について、根拠がないと反発している。米国による独善的な「勝利宣言」に違いない。

 米国では、交戦によるホルムズ海峡の事実上の封鎖を背景にガソリン価格が高騰し、国民の不満が高まっている。

 イランでの軍事行動に対する「不支持」が66%に上るとの米メディアの世論調査結果もある。

 焦るトランプ氏が、イラン攻撃の成果を並べ立てることで不満を和らげ、11月の中間選挙を有利に進めようとするのであれば、あまりに利己的である。

 演説後、ニューヨークの原油先物市場では指標の米国産標準油種の5月渡し価格が上昇した。停戦の観測が後退したからだ。

 トランプ氏は泥沼化したベトナム戦争などを引き合いに、短期の作戦での大きな勝利をアピールしたが、戦闘終結の具体的な道筋は示さなかった。

 ホルムズ海峡を巡る情勢はまったく見通せない。

 トランプ氏は封鎖の影響を受けている国々が開放に向け協力していないと批判し、先月には「米国はもう助けない。自分で石油を取りに行け」と発信した。

 1日の演説でも、ガソリン価格の上昇は、イランが石油タンカーや近隣諸国に攻撃を仕掛けるからだと責任を押し付けた。

 安全確保の責任を米国が投げ出した格好だ。イランの強い抵抗を受け、情勢をコントロールできていない表れだろう。

 中東の石油に依存する日本が、海峡の航行再開に協力すべきだとの主張をトランプ氏が強めていることが気がかりだ。

 日本政府が米国と意思疎通ができているのか、懸念する。