国の意向ではなく、原告の切実な訴えに向き合うべきだった。苦しみを長引かせる判断をした自治体の責任は重い。

 なすべきことは、一刻も早く全ての被害者を救済できる仕組みを作ることだ。

 県と新潟市は26日、水俣病の認定申請を棄却された8人を患者と認定するよう命じた新潟水俣病第2次行政認定訴訟の新潟地裁判決を不服として控訴した。

 認定審査は国の法定受託事務として県と市が行っている。

 地裁は12日の判決で「感覚障害の態様が典型例と異なっていても、水俣病であるとの蓋然(がいぜん)性を否定できない」などとして、認定申請を棄却した県と市の審査を「違法」と否定した。

 控訴の理由について、花角英世知事は「上級審に判断を仰ぎ、統一的な整理を求める」とコメントを出した。

 新潟市の中原八一市長は「この判決を受け入れると、新たな基準が示されない限りは認定審査の継続が困難になる」と語った。

 県、市とも国の意向を踏まえ、判断した。

 提訴から判決まで7年かかり、この間に原告2人が亡くなった。

 再び長い裁判を闘わせるというのか。原告の「年齢的にも何があるか分からない。早く被害を認め、解決してほしい」という願いに耳を傾けるべきだ。

 県と市に対し、専門家からは国の意向を理由にするのはあまりに無責任だと批判が出ている。

 棄却処分を出した自治体が、自らの責任で判断するべきだとの指摘はもっともだ。

 中原氏は判決を受け、国の判断基準と司法判断が食い違っていることに疑問を呈した。県と市は認定審査が法定受託事務である以上、現行の基準で審査するしかないとの立場だ。

 その基準が裁判で繰り返し否定されており、市は県とともに、基準の見直しを国に求めてきた。しかし、国は「現時点で見直す必要はない」との姿勢を崩さない。

 救済を求める被害者による訴訟が相次ぐ現状を踏まえると、自治体側が一歩踏み込んだ対応を取る必要がある。

 国が基準を変えないからと、救済を望む被害者を置き去りにすることは許されない。

 石原宏高環境相は会見で判決について聞かれ、「訴訟の当事者ではない」とし、県や市が制度の抜本的な見直しを毎年要望していることを「しっかり把握していない」と述べた。

 水俣病をはじめとする公害問題は環境省の原点だ。人ごとのような一連の発言は所管大臣として、論外である。

 国は繰り返し司法に否定されてきた現行の認定基準を見直し、被害者救済への道を切り開かなければならない。