転換に次ぐ転換である。国の大本となる農政の先行きが不透明だ。農家が稲作に継続して取り組める環境を整えねばならない。

 政府は、コメを「需要に応じて生産する」と明記した食糧法改正案を閣議決定し、国会に提出した。過剰な生産を抑制することでコメ価格の下落を避け、安定させることを目指す。

 「需要に応じた生産」は、1970年代から続いた生産調整(減反)政策で使われてきた文言だ。

 石破茂前政権が昨年8月に表明した増産方針を、先祖返りさせることとなる。「猫の目農政」の典型例といえよう。

 一方で、鈴木憲和農相は記者会見で「従来のコメ需要の減少を前提とした生産調整に関する規定を廃止する」とも述べた。

 これだけでは、コメの需給や米価に国がどう関わるのか、市場原理に任せるのか、あいまいだ。

 販路獲得に力を入れてきた県内の農家からは、生産が抑制されないかとの懸念も上がる。

 法改正が努力を続ける生産者を振り回すことのないよう、配慮を求めたい。

 政府は需要を拡大させ、それに応じた生産を推進する考えで、需要拡大策の例に輸出を挙げた。

 県内では2月末、県産米の輸出拡大に向け、生産者や輸出事業者、県などが「新潟米輸出拡大協議会」を設立している。

 背景には、少子高齢化による国内のコメ需要の先細りや、米政権の関税政策、円安などがある。

 事業者らからこうした取り組みが出てくるのは、農政が頼りにならないこともあるだろう。

 担い手の減少という面からも、生産の先細りが危ぶまれている。米どころの県内でも、自営農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は2025年に3万4541人と、5年で約25%減少した。

 食料安全保障に関わる問題である。政府は農業現場とともに、コメを継続して生産し続けられる長期的な策を探るべきだ。

 改正案では、コメの需給が逼迫(ひっぱく)した時に放出する備蓄米について、新たに民間事業者にも一定数量の保有を義務付ける。

 昨年、政府が備蓄米を放出した際、流通の遅さが課題になった。民間の迅速な動きに期待する。ただ民間には余分な保管施設は不足しており、実施には国の支援が不可欠となる。

 改正案は、集荷業者などに在庫量や取引価格の定期的な報告を求めるともする。「令和の米騒動」で、政府が流通実態や需給見通しを十分把握できなかったためだ。

 農林水産省が発表する全国の小売店でのコメ平均価格は、ここ3週間5キロ当たり4千円台を割り込むが、いまだ高止まりする。

 主食の高騰は国民に広く影響する。適切に情報を分析し、価格と流通の安定を図らねばならない。