繰り返されるストーカーによる悲劇を防がねばならない。実効性のある手だてを、社会を挙げて構築することが急務だ。
東京・池袋の商業施設で先月、女性がかつて交際していた男に殺害された。男も現場で自身の首付近を刺して自殺した。
男は別れた後も女性に付きまとい、女性から相談を受けた警視庁に昨年末、ストーカー規制法違反容疑で逮捕された。付きまといなどの行為をやめさせる「禁止命令」を受けていた。
警視庁によると、男は「もう近づきません」と供述していたが、1月末に釈放されてから約2カ月後に事件を起こした。
女性は警視庁に促され、一時親族宅に避難した。警視庁は電話などで女性と計9回接触した。男の釈放後に異常は確認されず、担当者は「最善の措置を取った」と述べている。
それでも悲惨な事件は起きた。対策に不備はなかったのか、検証が必要だ。
深刻なのは、禁止命令を受けても、行為がエスカレートするケースが後を絶たないことだ。
2023年に福岡市で、24年には東京都新宿区でそれぞれ女性が殺害された事件でも、男に禁止命令が出されていた。
警察は24年から、加害者を治療やカウンセリングにつなげる取り組みを強化した。受診は任意で、受診率を上げるために、費用を公費負担する自治体もある。
25年に受診したのは233人で、前年より49人増えた。しかし、25年の禁止命令は、00年のストーカー規制法施行以来最多の3037件に上っており、受診した割合はまだ低い。
池袋の事件の男も、警察に促されたが受診しなかった。
加害者治療に取り組む専門家は、カウンセリングなどを通じ自身の行為を客観的に振り返る機会が必要だと指摘する。
受診を義務付けるなど、見直しを検討するべきではないか。
ストーカー事案の摘発件数は増え続けている。25年は3717件で00年以降最多となった。警察への相談件数は2万2881件に上っている。
川崎市で起きた事件で、25年に警察の対応のずさんさが明らかになったことを受け、全国の警察が対応を強化したことなどが要因とされる。深刻な事態だ。
手口も巧妙化している。昨年末に水戸市で女性ネイリストが殺された事件は、位置情報の特定に使う紛失防止タグを利用し、女性の居場所をつきとめていた。
政府はこれまで、ストーカー規制法の改正を重ね、対策の強化を図ってきた。だが、凶行はなくならず、尊い命が失われている。
政府や関係機関は事件を一件一件検証し、対策の不断の見直しに努めねばならない。
