クマ対策の最前線に混乱を生じさせてはならない。判決は現場の実情をくんだ内容といえる。
昨年のような深刻なクマ被害は、今後も起こり得る。行政は、捕獲を担ってきたハンターの声も取り入れ、実効性のある対策を講じてもらいたい。
北海道砂川市でヒグマを駆除した際の発砲が問題となり、道公安委員会に猟銃の所持許可を取り消された道猟友会支部長の男性が、処分の撤回を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は道公安委の処分を違法とした。
男性は2018年、砂川市の要請でライフル銃を発砲し、約20メートル先のヒグマ1頭を駆除した。その際、ヒグマの後方には建物が複数あったが、駆除後に市の職員や警察が異常がないことを確認した。
しかし、道公安委は19年、発砲で銃弾が建物に当たる恐れがあったとして所持許可を取り消した。男性は撤回を求め提訴した。
一審判決は処分を違法としたが、24年の二審ではヒグマを貫通した銃弾が周辺にいたハンターの銃に当たったと認定し、処分を適法とする判決が出ていた。
最高裁判決で注目されるのは、発砲の危険性を認めた上でも、住民の生命などを守る「重要な意義」があったとした点だ。男性が、自治体の要請で出動した経緯も踏まえ、ハンターが果たす公益的な役割を重視した判断である。
判決が、取り消し処分は駆除の活動に「萎縮的な影響を及ぼす」と指摘したことも大きい。
実際、処分後には、民間団体でありながら駆除をほぼ一手に担ってきた猟友会に「公の活動に協力したのに、銃の所持許可を失いかねない」との懸念が広がった。
二審判決後には道猟友会が、自治体から駆除の要請があっても拒否する支部の判断を尊重する方針を示す事態にまで発展していた。
最高裁判決を契機に、駆除現場の安全を徹底しつつ、ハンターも安心して協力できる体制を考えなければならない。
県内では昨年、クマによる人身被害が7件に上った。
人の生活圏に現れる事例も増えている。市街地に出没したクマに迅速に対応するため、自治体判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」は、昨年9月の制度開始からことし3月末までに、県内ではイノシシ2件を含め15件あった。
クマ被害の防止に向けて国は3月、本県を含む中部で26年度に3500頭を捕獲することを盛り込んだ工程表を策定した。
ただ、肝心の担い手は猟友会会員の減少が続くなど不安が残る。
県内では26年度、妙高など4市が、狩猟免許を持つ人を公務員として任用する「ガバメントハンター」を導入する意向だ。
新たな取り組みの効果を自治体間で共有し、クマ対策の改善につなげてもらいたい。
