被害者やその家族を切れ目なく支える仕組みが必要だ。特に経済的支援の拡充は急務である。

 政府は、犯罪被害者らへの4月からの支援策を盛り込んだ「第5次犯罪被害者等基本計画」を閣議決定した。自身の被害内容を記録する被害者手帳の導入など307の施策を載せた。

 手帳は、支援団体などに被害を何度も説明する精神的な負担を減らすために導入する。

 性犯罪やひき逃げ事件の被害者、殺人事件や交通死亡事故の遺族らを配布対象として想定する。

 支援者側が対応状況を記録するカルテ化も進め、長期的な支援につなげる。

 閣議決定を受け、「新全国犯罪被害者の会」は「被害者の声を拾い、一歩進んだ」と評価した。だが十分な前進とはいえない。

 精神面だけでなく、経済面の確かな支援が欠かせない。

 被害者らは国からの給付金を受けるほか、加害者に損害賠償を請求することもできるが、資力がないなどの理由から賠償されないことは多い。

 日弁連が実施したアンケートによると、殺人など被害者が死亡した事件で賠償金が全く支払われなかったケースは7割超に達した。

 加害者が死亡したり、責任能力がなかったりすれば、請求すらできないこともある。

 こうした事態に対応する策を探るため、政府は海外事例を調査することになった。

 国が損害賠償金を補償した上で加害者から回収する北欧の例などが参考になりそうだ。救済策の整備を急いでもらいたい。

 独自の経済支援に乗り出す県もある。鳥取県は市町村と共同で基金を創設し、4月から被害者らの転居・防犯対策の経費を補助したり、遺児を支援したりする。

 国から被害者らへの給付決定に時間がかかってしまうため、基金を設けたという。被害直後からの迅速な支援を国として考えなければならない。

 2001年に大阪教育大付属池田小で起きた児童殺傷事件で長女を亡くした男性は昨年の講演で、事件直後は被害者や遺族自身、何が必要なのか分からない場合があるとして、「最適な支援にたどり着ける仕組み」を求めた。

 事件の直後か数カ月後かで、必要な支援も異なるという。

 適時適切に支えられるよう多様なサポートを用意すると同時に、一つの窓口に相談することで、そうした支援を受けられるようにすることが大切だ。

 今年1月には犯罪被害者等支援弁護士制度が始まった。経済的な事情から法的支援を受けることを諦めることがないよう、被害者に寄り添う制度だ。

 誰にも相談できずに泣き寝入りする人がいないよう、国は制度の周知に努めてもらいたい。