新潟県上越市で今秋、次期衆院選と市長選、市議補選の投開票日が同日となる「トリプル選」の可能性が浮上している。衆院解散・総選挙について、菅義偉首相が通常国会での解散を見送ったことで、東京五輪・パラリンピック後の「9月解散-10月投開票」となる公算が大きくなっているためだ。市選挙管理委員会は衆院選の日程次第では、既に決まっている10月の市長選と市議補選の日程を見直し、投開票を同日にすることも検討する。

 衆院議員の任期満了(10月21日)をにらんだ衆院解散・総選挙を巡っては、9月5日のパラリンピック閉幕後に解散し、投開票日は10月10日や17日などが軸とされている。任期満了後に投開票となるパターンも想定されている=表参照=。

 一方、11月8日の任期満了に伴う市長選は10月24日告示、同31日投開票とすることが決定している。市長選と併せ、市議の死去に伴う補欠選挙(欠員1)も行われ、ダブル選になることは既に固まっている。

 衆院選の投開票が31日となった場合、トリプル選は確定的となる。

 市選管によると、市長選の投開票は、市長の任期満了前日までの30日間以内(10月9日~11月7日)に行うとの規定がある。

 このため、衆院選が前や後に行われるパターンでも、市長選・市議補選の日程を見直し、投開票日を衆院選と併せることは可能となる。

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 トリプル選となった場合、投票所運営と開票作業に動員される市職員の人件費を削減できるほか、有権者が短い期間に2度投票に行く必要はなくなる。

 衆議院が突然解散された2017年秋の前回選では、市長選の日程が1週間前倒しされ、上越市では初となる市長選と国政選挙のダブル選が行われた。

 市選管の渡辺守事務局長は今回の対応について、「同日選は経費削減や有権者の利便性の向上につながる。情勢を見ながら今後、委員に検討してもらうことになる」と説明する。

 一方で、トリプル選は開票作業が大きな課題となる。衆院選の小選挙区と比例代表、市長選、市議補選に加え、最高裁裁判官国民審査の計五つの開票を行うことになる。

 渡辺事務局長は「開票にかかる時間はどうしても遅くなるだろう」と指摘した。

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 上越市を大票田とする衆院新潟6区は与野党がしのぎを削る。市長選は現職の引退に伴い、新人同士の争いが確定的となっている。市議補選は共産党が候補を擁立する方針で、ほかにも出馬への動きがあり、選挙戦となる可能性は高い。

 いずれも激しい戦いとなることが予想され、上越政界からは「人手が絶対に足りなくなる」などと、トリプル選への懸念の声が上がっている。

 ある地元自民党幹部は「選挙は誰でも動けるわけではない」と運動員の確保を心配する。

 野党幹部の一人は「党員が高齢化し、ビラ1枚配るのにも難儀している」と打ち明けた上で、「トリプル選になれば、政権選択選挙である衆院選に軸足を置かざるを得なくなるだろう」と予測した。