無償の愛物語に一味
生まれ育った新潟は「杉と男は育たない」といわれることがあるようですね。今回演じる役はまさにその表現にぴったりな男。出演シーンは長くないですが、演技のヒントにしました。
家族同士のやりとりを見て「こんな人たちいるよな」と、悲しさや面白さを共感してもらいたい。僕の役がストーリーを引き立てる「スパイス」になっていたらうれしいな。

ふるさとに帰るとたくさんの思い出がよみがえります。小学生の頃は毎日のように自転車で友達と日和浜に遊びに出掛けたり、新潟西港へ釣りに行ったりした。新潟の豊かな自然は今も脳裏に焼き付いています。万代シテイのカレーやそばもよく食べたなあ。
当時、一番驚いたのは万代シテイのレインボータワーが開業したこと。今でいう東京スカイツリー(東京都)が新潟にできたというくらいの衝撃でしたよ。うきうきしながら上った記憶があります。女の子と行く夢はいまだに実現していませんが...。
今感じるのは、父親って無償の愛を送り続けるのが役目なんじゃないかということ。父が3年前に亡くなりました。言葉少なで恥ずかしがり屋。そんなところは達也と重なると思いますよ。
若いときは「おやじなんか嫌い」と反発した時期もありました。ただ、今思うと自由に育ててもらったなと感謝しています。それこそが「父の愛」で、何か見返りを求めてはだめなんだな。僕は娘が2人いるので、なおさらそんなことを考えながら芝居しました。
今回の映画って派手さやかっこよさといったものは正直ないんですよね。「普通の人」が主役。だからこそ貴重な映画だと思う。人間模様が丁寧に描写されていて、共感できるところが随所にある。特に若い人は親を見る目が変わるきっかけになるかもしれない。
来年初春、映画館に足を運んでいただき、皆さんの心のひだを震わせられればと思っています。
新潟日報 2017/05/20