父親の存在感再発見
「ミッドナイト・バス」は親子の再生と再出発、親離れ子離れ、恋愛-。いろいろなものが絡み合ったストーリー。台本を読み、「リイチ(主人公の愛称)はこういう男」と頭で理解すると同時に、自分はこういうときどうだろうって、「俺」が出てくる。それをすりあわせて役をつくった。
リイチは不器用で、優しくて、お父さんで。ちゃんとしてるんだけど、生きるのが下手くそな人でもある。男と父親の顔の両方を持っているから、演じていていろいろなことを考えた。
子どものころ、「父親って何のためにいるんだろう」と思っていた。お母さんはいなきゃいけない、でもお父さんは元気だったら家にいなくてもいいんじゃないかと。父親が厳しかったからかもしれない。でも映画の中で、「男親は扇の要だ」というせりふがある。子どもだった自分も、父親のことをどこかでそう思っていたことに、せりふを言いながら気が付いた。

家族にはいろいろな形がある。寄り添える時に寄り添って、巣立つ時には巣立っていくのが理想。全員がそうできるわけじゃないけど、それでも互いのことを思い合えたらすてきだなって、映画を見て思ってもらえたらうれしい。
撮影で、高速バスを実際に運転したのは貴重な経験だった。免許を取りに行ったときは「(撮影場面は)ちょっとだけなんじゃねえかなあ」と半信半疑だったけど、がっつり撮ったからね。関越道は最初すごく緊張した。それがだんだん、本当に自分がリイチになって、普段からこの道を走っているような感覚になれた。横に乗った新潟交通の人が、褒めるのがうまいんだよ。それでがんばれた。
新潟ロケでは萬代橋がかっこよくて印象的だった。佐渡ではハードスケジュールで、観光したい所はいっぱいあるのにできなかったんだよ。最後の日、ばーっと広がる海を見て、悔しくて、また来ようって思った。次はゆっくり、きれいな場所を見て回りたい。
新潟日報 2017/05/11