新潟で撮りたかった
新潟では、長岡空襲と長岡花火を描いた「この空の花-長岡花火物語」(2012年・大林宣彦監督)の撮影で、監督補佐としてお世話になった。そのころから新潟を舞台に映画を撮りたいと思っていた。
それも「新潟でやったら面白い」程度のものじゃなく、もっと必然性があるもの。地元の人が「これは新潟でないと」と思うような企画をしたかった。
そんなときに伊吹有喜さんの小説「ミッドナイト・バス」を読んだ。大人の夫婦の話というのはやってみたいテーマ。でも一緒にやろうとしていた東京の会社が、最初の打ち合わせで降りてしまって。悩んだ結果、やる気になって、自分で企画書を作って出版社に売り込んだ。

元夫婦役の2人に共感
主人公・高宮利一役の原田泰造君と仕事するのは(2004年の長編デビュー作「ジャンプ」以来)2本目。今回の登場人物の中で、年代的にぼくが一番共感できたのも泰造君と、元妻・加賀美雪役の山本未來さんだった。この元夫婦2人のシーンがすごくよかった。
利一には恋人の古井志穂(小西真奈美)がいるけど、元夫婦という関係はちょっと特別。かつて生活を共有し、子どももいる。そんな2人が再会し、ものすごく近づいていく。この関係が見る人にどう受け止められるかが肝だと思う。
原作は家族の再生と再出発の物語といわれているけど、実は一言で説明するのが難しい作品。再生といっても全てが元通りになるわけではない。地味な映画かもしれない。ただ、家族、親子、夫婦-その機微をどうすくうかを考えて作っています。
新潟にはもう何度も来ているけど、今回初めてりゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)と白山神社の間の桜が植わっている場所を歩いた。神社もりゅーとぴあも行ったことはあったけど、その間にあんないい場所があるとは知らなかった。まだまだ知らない場所がいっぱいあるなと思った。
信濃川沿いの河川敷もきれい。新潟は生活するのにいい所。今もうちで食べるコメは長岡の米屋さんから買う佐渡米。飼い犬のために東京から移住しようかと半ば本気で思っている。
今は撮影が終わり、編集の作業が始まっている。最後まで一つでも多くいいカットを拾って、つなげて、恥ずかしくない作品に仕上げる。新潟の人に盛り上がってもらえたらうれしい。
新潟日報 2017/04/20