多様な親子関係描く
最初に「ミッドナイト・バス」で深夜バスの話を書くことになったとき、いくつか候補の土地がありました。その中で新潟と東京とを結ぶ、長い関越トンネルは一つの鍵になりました。トンネルを越えると天候ががらりと変わるのを体験し、新潟を舞台に、トンネルを越えると男、戻れば父親という、男性の二面性を描けるのではと思いました。
竹下昌男監督の印象は、穏やかで誠実な方。映画撮影の現場を拝見できて、本当にうれしかった。登場人物のせりふを、俳優さんの体を通して聞ける。文字だったものが立体化して、すてきな声に乗って耳に届く。感動しました。
主演の原田泰造さんが、演技のために大型バスの免許を取られたと聞いて、そこまでしていただいて「リイチ(主人公・高宮
主人公と義理の父、元妻とその父、主人公と子どもたち-。「ミッドナイト・バス」には、さまざまな親子の関係が描かれます。「お父さんに一声掛けてみようかな」とか「子どもとちょっと話してみようかな」とか、そうしたきっかけになってほしい。
新潟のまちの魅力や、人情の厚さが伝わったらうれしいです。新潟とは「ミッドナイト・バス」の前の作品からご縁がありました。天竜川の奥の山林王一族を書いた「なでし子物語」。旧家の生活様式や考え方を知るため、新潟市の豪農・伊藤家について取材をしました。

新潟の風土、人情に感動
取材の折、新潟の人の温かさ、人情、風土は本当にすてきだなと思いました。新潟市の北方文化博物館では、昔の話やお屋敷の造りについて教えていただき、物語の舞台になるお屋敷の半分はそれをベースに作りました。
新潟に来るたび、新潟市のシティガイドさんの案内で歴史を学び、おいしいものを巡りました。地域や方言の話を伺い、冬に歩くときはカイロをくださった。お気遣いがうれしかったのと、お米とお魚がおいしかったのが印象的でした。
食べ物のおいしさは作品にも影響を与えています。原作の「ミッドナイト・バス」にも万代シテイバスセンターのカレーや、たれカツなどが登場しますが、書ききれなかったものがたくさんありました。だから以後の作品にもかんずりや村上のサケが出てきたり、新潟出身の女性が登場したりします。そうしたものも、新潟の魅力ですね。
新潟日報 2017/04/21