トキついに100羽 自然ふ化本格化

 佐渡市新穂長畝の佐渡トキ保護センターは2006年5月12日、新たにトキのひな2羽が誕生、これとは別のひな1羽が死亡した、と発表した。【2006/05/13】

 センター内のトキはこれで成鳥80羽と合わせ100羽となった。ひなは9日から12日にかけ、親が卵を温める自然ふ化で生まれた。一方、死亡したひなは巣の中で親か、きょうだいにつぶされた可能性が高い。今年の繁殖期のひなは、これまでに死亡した2羽を除き20羽となった。同センターの長谷川勝所長は「(100羽という)数は特に目標にしていない。自然ふ化に力を入れており、成果を上げていきたい」と話している。

 佐渡トキ保護センターのトキが100羽の大台に達した。増殖第1号となる1999年の優優(ユウユウ)誕生から7年。2008年の試験放鳥、15年の野生復帰に向け弾みがついた格好で、関係者からは喜びの声が上がった。

 トキの増殖に長く携わった近辻宏帰・元センター長(63)は「思ったより早く100羽に到達した。これまでやってきて3ケタになるなんて夢のよう」と声を弾ませる。

 島内で餌場となるビオトープの整備に取り組むNPO法人トキどき応援団の仲川純子事務局長(49)は「節目の数字であり、野生復帰に向け活動の励みとなる。(日本最後のトキ)キンが1羽だったことを思うと感慨深い」と語る。

 センターでの増殖は順調に進み、2004年は19羽、2005年は22羽のひなが誕生。昨年度末で80羽までに増えた。

 センターでは「野生復帰を前にできるだけ自然に近い形でふ化させたい」と、今年は親にじかに卵を抱かせる自然ふ化を本格化させた。

 この結果、昨年、一昨年ともにわずか1組だった自然ふ化は、今年は現時点で生存する20羽中、15羽と大幅に増えた。

 センターの金子良則獣医は「今年は最初から自然ふ化1本で取り組んでいる。なるべく人間が手を掛けないでトキの本能を引き出したい」と意欲を見せる。

 今後は、いかにトキを自然に適応させていくかが課題となる。同市新穂正明寺に本年度末に完成する順化施設では餌の捕り方や巣作りの訓練を行う計画。2年後の試験放鳥が野生復帰への試金石となる。