衆院選は19日に公示される。岸田文雄首相は14日に衆院を解散する方針で、新潟県内6小選挙区では既に前哨戦が展開されている。与党・自民党は1~6区での公認候補擁立を決めた。立憲民主党などの野党系候補も全選挙区で出馬を予定しており、いずれも与野党対決の構図となりそうだ。与野党の一騎打ちが想定される選挙区がある一方、3人以上が立候補を予定する選挙区も複数あり、激戦が予想される。各選挙区の情勢を探った。
新潟市の都市部を中心とする1区は、立憲民主党現職の西村智奈美氏(54)と、日本維新の会前職の石崎徹氏(37)、自民党新人の塚田一郎氏(57)が争う三つどもえの構図だ。非自民票の行方や、都市部に多いとされる無党派層に浸透できるかなどが勝敗の鍵となりそうだ。
2017年の前回選は西村氏と、自民公認だった石崎氏の一騎打ちで、西村氏が1万5千票差を付けて勝利し、敗れた石崎氏も比例復活した。昨年、石崎氏が元秘書への暴行罪で略式起訴されたことを受けて離党し、自民は塚田氏を新たな公認候補に選んだ。
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西村氏は立民県連代表として、県内の国政選挙や地方選挙で野党連携のまとめ役を担ってきた。自身も野党統一候補として各政党と連携し、政権批判票や非自民票の取り込みを狙う。
9月の事務所開きでは支援団体の連合新潟のほか、共産党、国民民主党、社民党の各県組織幹部らを招き「オール野党態勢」を演出した。西村氏は「みなさんからの力をいただいて必ず勝ちたい」と力を込めた。
ただ、保守系2人の出馬で陣営が緩まないかを警戒する声も。立民県連の大渕健幹事長は「全く楽観できない。危機的な状況を共有しないといけない」と引き締めた。西村氏も自身の落選経験を挙げ「私は全く緩んでいない」と強調する。
当選5回ながら、以前から指摘される後援組織の弱さは積み残されたままだ。選挙運動は労組頼み、得票は「風」頼みというもろさを抱えており、労組関係者は「組合だけでは運動量に限界がある」と懸念する。
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維新からの出馬を決めた石崎氏は先月末に議員辞職し、自民比例で得ていた議席を返上した。本県で維新系候補が国政選挙に出るのは13年の参院選以来。西村氏、塚田氏の両陣営は「影響は未知数」とする。
維新は国政選挙で一部の保守層や無党派層の受け皿となってきた。石崎氏陣営は西村氏と塚田氏の両支持層の取り込みを狙う。
石崎氏は今月開いた出馬会見で「自公政権や、立民などの野党とは違う、維新という3番目の選択肢を望んでいる民意は1区にもあると思う」と語った。
しかし、自民公認時のような組織戦を展開できないという弱みを抱える。維新の県組織は設立準備中で、地方議員もいない。秘書への暴行問題が尾を引いているという課題もある。
陣営は、石崎氏の自民時代の人脈を使って支持を広げる考えだ。さらに、知名度のある大阪府知事の吉村洋文党副代表と並ぶポスターを貼るなど浸透を図る。
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新人の塚田氏は参院議員を2期12年務めたが、19年の参院選で敗れ、地元・新潟市の衆院1区に移った。自民県議や保守系市議らと企業や地域の自民支持者を回り、票固めを進める。塚田氏は「かなりの数を回った」と自信をのぞかせる。
花角英世知事や、元自民参院議員の中原八一新潟市長との「近さ」も強調。8日の事務所開きで両者の政策を引き合いに出し「実現のお手伝いができるのは私をおいてほかにいない」と実行力をアピールした。
都市部での選挙戦を意識し、無党派層対策に力を入れる。自転車で選挙区内を細かく回るほか、大学生ら若年層とミニ集会を開くなど支持層の拡大を図る。
ただ、塚田氏自身の「忖度(そんたく)発言」問題や、塚田氏を1区候補に選ぶ過程に不満を抱える関係者がいることが、選挙活動に影響する可能性もある。自民新潟支部長の小島隆県議は「手を抜く人がいないようにしないといけない」と話す。