年の瀬が迫った2021年12月27日の朝、新潟県庁知事室。外務省や文化庁の担当者がひそかに訪れた。翌日に公表する文化審議会世界文化遺産部会の答申案が、知事・花角英世と佐渡市長・渡辺竜五に示された。
答申案は「佐渡島(さど)の金山」を世界文化遺産の国内推薦候補に選定するとしていたが、地元の悲願を打ち消す異例の一文が付け加えられていた。
「世界文化遺産部会による国内推薦候補の選定は推薦の決定ではなく、今後、政府内で総合的な検討を行っていく」

世界遺産登録に向けては、文化審の答申を踏まえ政府が推薦書を閣議了解し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出するのが通例。答申に反し政府が正式に推薦しなかっ...
残り1038文字(全文:1338文字)