それは突然の通告だった。新潟県佐渡市の「佐渡島(さど)の金山」の推薦書を提出してから1カ月もたたない2022年2月28日。国連教育科学文化機関(ユネスコ)から日本政府に1通の書簡が送られてきた。

 構成資産の西三川砂金山に関する記載が不十分だと指摘する内容だった。砂金の採取に使われていた導水路跡について、途切れている箇所の「説明が欠落している」と主張していた。

◆極秘交渉「激しく、どつき合うようなやりとり」

 書簡を目にした関係者はあぜんとした。「あまりにも細かい。見た人間は誰一人納得していなかった」

 2月に提出した正式版の推薦書はもう修正できず、ユネスコを説得するしかなかった。文部科学省や文化庁の幹部が断続的にパリの本部を訪ね、当局と協議を...

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