将棋の渡辺明棋王=名人との二冠=(38)に藤井聡太五冠=竜王・王位・叡王・王将・棋聖=(20)が挑む第48期棋王戦コナミグループ杯(新潟日報社など主催、協賛社・大塚製薬)5番勝負第3局が5日、新潟市中央区の新潟グランドホテルで指される。ここまで藤井五冠の2連勝で最年少での六冠へ王手をかけている。10連覇中の渡辺棋王も簡単には譲れない。頂上決戦を前に両棋士にゆかりのある新潟県関係者も大一番にエールを送る。
渡辺棋王は両親が上越市出身。通算タイトル獲得数は歴代4位の31期を誇るが、初タイトルの竜王を2004年12月、南魚沼市の旅館ryugon(龍言)での対局で獲得した。
今もプライベートで訪れるという。小野塚敏之支配人(45)は「思い出のある特別な場所なのではないか。温厚な方と聞いている」と語る。「藤井五冠も人気だが、いい対局をしてほしい」と思いを寄せる。
渡辺棋王は棋王戦5番勝負で5日の会場となる新潟グランドホテルにこれまで8回訪れている。営業部の伊藤建二さん(58)は渡辺棋王がこれまでの対局時に取った食事やおやつのメニューを記録しており、19年の対局の前日にメモを手渡した。その日行われた前夜祭で、渡辺棋王が「これまで食べたおやつのメモを頂きありがたかった」とあいさつしたという。伊藤さんは「お気遣いができる方だと思った」と振り返る。
これまで同ホテルでは5勝3敗。永世棋王になり年々風格が増す渡辺棋王への姿を敬い「棋王といったら渡辺さん。底力を見せてほしい」と話した。
藤井五冠は過去に1度、新潟県で対局している。22年6月、新潟市西蒲区の旅館高島屋で指された棋聖戦5番勝負第2局だ。防衛戦となった藤井五冠がここで初勝利を挙げ、棋聖3期獲得の足掛かりにした。
女将(おかみ)の高島基子さん(58)は、旅館に入り、ロビーに置かれたソファの端に小さく座ってうつむいていたのが印象的だという。「宿泊部屋もきれいに使われていて、心遣いのある好青年だった」と盤上で見せる強気な姿とのギャップに驚く。
その3カ月前には王将獲得の祝賀会で佐渡市を訪れた。当初王将戦7番勝負第7局が予定されていたが、藤井五冠の4連勝で対局がなくなったため、日本将棋連盟などの計らいで開催された。
日本将棋連盟佐渡支部幹事長の光村克己さん(70)は、祝賀会と合わせて行われた島内アマ王将戦の表彰式の光景が目に焼き付いている。「藤井さんは表彰される人より深くお辞儀して記念品を手渡した。謙虚な姿がすがすがしかった」と絶賛する。5日の対局を心待ちにし「新潟の地でぜひ六冠達成してほしい」と期待した。
◆大盤解説をライブ配信
第3局の大盤解説会が5日、対局会場と同じ新潟グランドホテルで行われ、新潟日報ニュースサイト「デジタルプラス」でその模様をライブ配信する。入場券は完売した。
解説者は高見泰地七段、聞き手を山口恵梨子女流二段が担当し、第3局立会人の深浦康市九段も登場する。
配信時間は午後1時〜午後8時、デジタルプラス内の中継ページから視聴できる。