1996年12月、メキシコ・メリダ。会場では原爆ドームの世界文化遺産登録を審議する、世界遺産委員会が開かれていた。

◆日本の歴史認識を問題視

 原爆投下の当事国として非難を浴びたくない米国は「第2次世界大戦を終結させるため、米国が原爆を使用する以前の出来事が重要で、加害の歴史的視点が欠けている」と指摘。日本は同盟国だとしながらも「この登録において、友人を支持することはできない」と強く反発した。

 一方、登録によって日本がアジア諸国に対する加害責任を免れるのではないかと、危機感を持った中国も異論を唱えた。

 方向性は違えど、両国とも問題視したのは日本の歴史認識だった。

原爆ドームを含む平和記念公園には、海外から訪れる観光客が目立つ=広島市中区

 この1年前、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で...

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