カンボジアの山岳地帯、標高約620メートルの断崖に鎮座する世界文化遺産「プレアビヒア遺跡」。クメール王朝が9世紀に建立した石造りの寺院は、華麗な彫刻が施され、神聖さを漂わせている。
遺跡はちょうど、タイとの境にある。両国は遺跡周辺の国境線を巡って半世紀以上前から長く対立を続けてきた。

カンボジアの推薦によって遺跡が世界遺産登録された2008年7月。登録に反対するタイ人が寺院に向かうため検問を突破し、カンボジア軍に身柄を拘束された。これを皮切りに両国軍による衝突が激化。国際司法裁判所の命令を受け、2012年に両国軍が撤兵するまで交戦を繰り返し、民間人を含む多数の死傷者を出した。
◆ナショナリズムの対立を政治利用
登録に前後して...
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