1990年代に英国の研究者が提唱した「ダークツーリズム」という新しい概念がある。戦争や災害をはじめ悲劇や辛苦の現場を巡る「学び」の旅だ。
◆「海外の展示と比べても遜色ない」
研究の国内での第一人者である金沢大教授、井出明(54)と、産業遺産や労働史に詳しいハーバード大教授、アンドルー・ゴードン(70)が2023年4月上旬、佐渡市を訪れた。目的は、無宿人の墓や朝鮮人労働者の炊事場跡など、佐渡金山周辺の遺構を巡ることだ。

一行はガイド役をした郷土史家とともに地域を歩いた。史跡佐渡金山の代表的な見学コースで、江戸初期の坑道跡である「宗太夫坑コース」を訪れた際は、技術だけではなく、人形や解説板を使って、江戸時代の労働者の立場から見た展...
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