【2021/12/07】

 1979(昭和54)年夏の暑い日だった。

 山古志村(現長岡市)の小松倉集落。草いきれとセミ時雨の中、軽四輪駆動車の助手席に元首相の田中角栄が乗り込んだ。「あちち」。田中は熱せられたシートに飛び上がった。

 ハンドルを握っていた地元の小林正(83)は当時を鮮明に覚えている。車をひんやりした中山隧道(ずいどう)に入れると、田中は「ゆっくり行ってくれ」と言い、ツルハシの掘り跡などをじっと観察した。

 軽自動車がやっと通れるぐらい狭い隧道を抜けた後、田中は「小林君、中山隧道は先人の掘った宝だ」と絶賛。より大きなトンネルの建設を小林が求めると、「間違いなく(建設)する」と約束した。...

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