
年齢を重ね、食の好みが変わったという人は多いだろう。50代直前で甘党の記者もチョコレートやクリーム、砂糖をたっぷり使った濃厚なケーキよりも、あっさりした味と軽い食感のシフォンケーキを欲するようになってきた。
シフォンケーキは、柔らかい織物のシフォン(フランス語)に食感が似ているというのが名前の由来で、1920年代に米国で誕生したという。保険外交員で料理愛好家だった男性が考案し、パーティーなどで振る舞うと「ふわふわして、こくがある」と評判になったのだそうだ。
レシピは長らく秘密だったが、考案者の男性が47年、食品会社に売却。その後に公開され、「卵や小麦粉など、身近にある材料で手軽に作れるケーキ」として一般家庭に広まった。
日本でも1980年代から、洋菓子店やカフェなどで提供されるようになった。健康志向の高まりを受け、材料の小麦粉を米粉に置き換えて体に優しいグルテンフリーにしたり、カラフルな生地をクリームなどでデコレーションして写真映えを意識したりと、時代に合わせて進化している。
新潟県の上越地域でも近年、シフォンケーキを扱う菓子店やカフェが目立つようになった。地元産の米粉やフルーツ、上越特産の発酵食品を使って付加価値を高めた商品が多い。作り手も「シンプルだからこそ素材の質が味や食感に出る」と口をそろえる。上越の食の豊かさを3店のシフォンケーキで味わってみた。...
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