サッカーのアルビレックス新潟は、J1復帰1年目となった今季(2023年シーズン)を10位で終えた。J2でボールを保持して攻めるスタイルを積み上げ、そのスタイルを継続して挑んだ6年ぶりの舞台。大きな補強もなく、苦戦を予想する声もあったが、J1の強敵にもまれながら、チームの特長を深めていった。今季の戦いを振り返り、来季を展望した。(3回続きの1)
6月11日、リーグ戦の折り返しとなる第17節京都戦。一時は同点に追い付いたものの1-3で敗れた。リーグ戦4試合連続勝ち星なしとなり、ビッグスワンにサポーターのブーイングが響いた。
MF伊藤涼太郎のベルギー移籍が決まり、この日がラストゲーム。計7得点4アシストでチームをけん引してきた攻撃の核の移籍に、サポーターはチームの先行きを案じた。
開幕直後こそ順調だったが、4月以降は黒星が先行した。ミスを犯しての失点が増え、下位チームからも勝ち点を取りこぼした。攻守の切り替え、強いフィジカル、プレーの強度…。J1の高いレベルに直面した。
安野努フィジカルコーチが「回復力が間に合わなかった」と話すように、けが人も続出。その中でのエースの離脱だった。

ベルギー移籍前、新潟でのラストゲームを終え、サポーターに手を振る伊藤涼太郎=6月11日、ビッグスワン
それでも松橋力蔵監督は「やり続けるしかない」とスタイルを変えなかった。積み上げてきた新潟らしいサッカーを「さらに良いものにしていく」という信念は揺るがず、それが後半戦に花を開いた。
伊藤が抜けた後半戦の戦績は、7勝7分け3敗。伊藤のアイデアや技術で打開することが多かった攻撃は、「集合体で向かっていく攻撃」(DF千葉和彦)へと変化した。
「涼太郎君に頼っていた部分を『自分がもっとやらなきゃ』と、みんなが思い、一人一人の良さが引き出されていった」とMF秋山裕紀。ボールを動かしながら数的優位の状況をつくり出し、MF松田詠太郎のドリブル突破やMF三戸舜介のミドルシュートなど、それぞれが持ち味をいかんなく発揮。チームとして、J1のレベルに適応していった。

守備も大幅に改善した。最終盤では、J1でクラブ初の4試合連続無失点。DF新井直人は前半戦で「ある程度(体を)寄せたと思っても、シュートは入れられてしまう。このままではいけない」と実感。後半戦では、寄せる距離の基準を引き上げたと強調する。
プレスにいくべきか、コンパクトな守備ブロックで守るべきかといった、状況に応じた判断力を身に付けながら、「一人一人がJ1の強度に慣れていった」と新井。チームは経験と自信を高めていった。
9試合連続無敗のまま、白星で締めくくった最終戦後、指揮官は力を込めた。「シーズンが進む中で、個々も、チームのレベルも、われわれが求めるスタンダード(基準)をさらに上げることができた」。ぶれずに継続する姿勢が結実したシーズンだった。
<中>競争促すコンバート、リーグ再浮上の原動力に 出場機会増やす選手続々、“全員戦力”貫き通す
<下>総得点J2時代から半減、決定機の“その先”が… 外国人FWは不発、真価問われる「新潟スタイル」
× ×
※リンク先の一部は会員限定コンテンツです。新潟日報を購読中の方は、ご家族を含め、無料で「デジタルプラス」会員に登録して読むことができます。