第49期棋王戦第3局に、大盤解説者として訪れている千田翔太八段(29)は、ちょうど7年前の棋王戦第3局でも同じく新潟市を訪れ、渡辺明棋王(当時)に挑んでいる。1勝1敗のタイで迎えた第3局は、どちらがタイトルに王手をかけるか重要な一局だった。
「優勢を築いたが、中終盤でミスがあった。プレッシャーがかかって、心理的な揺れ動きがあり、タイトル戦の重さを感じた」。千田さんは取材に、初めてのタイトル挑戦だった当時を振り返り、こう語った。
22歳で六段だった千田さんは、いち早くコンピューターを取り入れた研究に取り組み、研さんを重ねていた。対局前日の新潟日報社のインタビューでは、「棋力の向上に向け、コンピューターで勉強しており、その成果を大舞台で見せて、タイトルを取りたい」と意欲を語っていた。
対局は、最後まで形勢が揺れ動く激戦を千田さんが制した。ただタイトルに王手をかけたものの、その後、連敗して届かなかった。

2017年の棋王戦で、対局室に入る千田翔太六段。後ろには渡辺明棋王の姿も(いずれも肩書きは当時)=17年3月5日、新潟市中央区の新潟グランドホテル
それから7年。千田さんは今期の順位戦B級1組で昇格を決め、来期はトップ棋士の証しであるA級に上がる。「今までやっていなかった四間飛車をやってみたり、将棋を一から楽しむ気持ちでいきたい」
解説にも力を入れたいと考える。藤井聡太八冠の活躍で将棋ブームが盛り上がる中、ネット上などで将棋の内容そのものに対する解説が弱いと感じていた。「一局の背景や指し手の狙いをプロの分析で伝えたい」
今回の第3局の大盤解説では、小説「雪国」を引き合いに出すご当地ネタも交え、両対局者の狙いを解説。分かりやすい語り口に、会場からは大きな拍手が送られた。