
興味がない新潟県民からすれば、高校サッカーが目に触れる機会は地上派テレビの中継もある冬の全国高校選手権くらいかもしれない。でも、今年はそれだけではもったいない。
今、高校生年代で最高峰の舞台となっているのが、クラブユースも含めた年間のリーグ戦で、本当の日本一を決める「高円宮杯U-18(18歳以下)プレミアリーグ」だ。
4月から行われている今年のプレミアリーグに、初めて帝京長岡高校男子サッカー部が参戦している。特にそのホームゲームは市内を中心にサッカーファンの注目を集める。県高校総体も圧勝し、その強さは本物だ。盛り上がる長岡の様子やチームの歴史、注目の選手などを取材した。(運動部・山崎祥吾)
※編集担当追記:帝京長岡高は全国高校総体(インターハイ)でも快進撃を見せ、大差で勝ち進み、準々決勝では強豪青森山田高を撃破しました。準決勝は昌平高(埼玉)戦で惜しくも敗れましたが、新潟県勢初の3位となりました。
高校生のリーグ戦に観客1000人! 憧れの舞台が目の前に
長岡ニュータウン運動公園で5月19日に行われたプレミアリーグの帝京長岡高のホーム戦。1000人を超える観客が集まり、市民やサッカーファンがレベルの高い戦いに見入っていた。

帝京長岡高は昨年、下部リーグの北信越プリンスリーグを制し、プレーオフを勝ち上がって初の昇格を決めた。昨年まで帝京長岡高のグラウンドで行われた、プリンスリーグのホーム戦では多くて観客250人ほどだったという。それが今年は、これまでのホーム戦4試合で平均925人にまで増えた。
「長岡市にプレミアリーグが来た」と喜ぶのは、サッカーファンだけでなく、近隣でサッカー部に所属する小中高生や指導者も同じだ。多くの人が足を運び、にぎわいを見せている。
帝京長岡高の下部組織「長岡JYFC」の選手たちも先輩たちのプレーや試合の迫力に目を輝かせる。新潟大付属長岡小学校6年生の男子児童(12)は「帝京長岡サッカー部は憧れの存在。いつかここに立って、得点を決めたい」と胸を高鳴らせ、長岡西中の生徒(14)も「高校のトップレベルなので、見ていて刺激になる」と話す。子どもたちがレベルの高いプレーを身近に感じることで、モチベーションを高められる場にもなっている。

そもそもプレミアリーグとは? 海外サッカーの方ではなくて…?
そもそもプレミアリーグを知らない人に少し説明したい。中にはイングランドのプロリーグじゃないの? という人もいるかもしれないが、「高円宮杯U-18プレミアリーグ」は日本サッカー協会が主催する大会で、2011年に始まった。全国の高校部活動の強豪校とJリーグクラブのユースが唯一公式戦で対戦できる舞台で、24チームだけが参加できる。
東西2地区に12チームずつ分かれ、帝京長岡高は西地区に所属。各地区ともホーム&アウェーの2回戦方式で4月から12月まで総当たりのリーグ戦を実施し、地区優勝チーム同士がファイナルで日本一を争う。一方、各地区の下位2チームは下部リーグのプリンスリーグに降格する。帝京長岡高は昨年、プリンスリーグの北信越地区1部を優勝し、6度目のプレーオフへの挑戦で参入を決めた。プレミア初参戦の今季、全22節のうち、現在(6月7日)第8節の途中まで終え、4勝3敗で西地区の12チーム中4位=順位表参照=と健闘している。

新潟県勢では、2016年にアルビレックス新潟U-18が参戦して以来のことで、参加するだけでも高いハードルがある。ちなみにこの時の新潟U-18には、現在トップチームで活躍する長谷川巧がおり、新潟から海外移籍した本間至恩らも高1世代でいたが、東地区の最下位に沈み、1年で降格してしまった。

現在、海外で活躍する南野拓実(モナコ)や久保建英(ソシエダ)、冨安健洋(アーセナル)ら日本代表の主力も、この舞台を経験した選手たちだ。今年も年代別代表でエース格の名和田我空(神村学園高)ら注目選手がそろっており、将来の日本代表が長岡を会場の一つに真剣勝負をしていると言っても大げさではない。
「長岡をサッカーの街に」 谷口哲朗総監督の夢
そんなプレミアリーグを一つのきっかけに「高校サッカーの素晴らしさをもっと表現していきたい」と熱く語る人がいる。帝京長岡高のサッカー部を指導して29年目の谷口哲朗総監督(50)だ。「100年後でも良いから、長岡市を『サッカーの街』にできたら」。

巧みな個人技と流動的なパスワーク―。〝帝京長岡スタイル〟とも呼ばれる伝統を築いてきた谷口総監督。2000年に監督に就任すると、...