
地域活性化と人口減少の食い止めを目指し、安倍晋三首相(当時)が「地方創生」を打ち出して2024年で10年。くしくも初代の地方創生担当大臣だった石破茂氏が首相に就いた。政府が目標に掲げた雇用や人口増、出産・子育て環境の整備は進んだのか。東京一極集中から脱却する施策に効果はあったか。石破政権下で行われる衆議院選挙(衆院選)を前に、新潟県の地方創生の現在地を探った。(3回続きの2)
衆院が解散し、事実上の選挙戦へと突入した10月9日。新潟県妙高市で暮らす髙橋侑大さん(31)の長男は誕生からちょうど100日を迎えた。髙橋さんと妻の咲姫さん(34)は、わが子の小さな手を握りながら「かわいくて仕方がない」と目尻を下げた。
髙橋さんの長男は長野県上田市の病院で生まれた。咲姫さんが無痛分娩(ぶんべん)を選択し、条件が合う一番近い病院があるのが上田市だったからだ。
自宅から病院まで約90キロ。高速道を使っても1時間半弱かかる。髙橋さんは出産に立ち会うため、病院近くのホテルに泊まった。宿泊代は妙高市が2024年度から始めた「出産時宿泊費用等助成制度」を活用した。
妙高市にはお産を扱う医療機関がない。2016年3月末で市内の産婦人科クリニックが分娩をやめたためで、妙高市の多くの妊産婦は隣接する上越市で出産する。しかし、県内で無痛分娩ができる施設は新潟市にしかないため、髙橋さん夫妻はより近い上田市の病院を選んだのだ。
▽独自の支援に取り組む妙高市
妙高市は全国や県全体より早いペースで少子化が進む。合計特殊出生率は2014年が1・71だったが、22年は1・16となった。出生数は14年が228人だったが、22年は117人とほぼ半減した。

こうした状況を受け、妙高市は出産・子育て支援に特に力を入れる。21年度に出産のタクシー利用の助成を開始。24年度には髙橋さんも活用した宿泊費の助成を創設した。いずれも市が財源を捻出する独自事業だ。
国も...