上越市の中川幹太市長
上越市の中川幹太市長

 新潟県上越市の中川幹太市長(49)の任期が残り1年を切った。副市長4人制導入を今任期中断念するなど主要な公約は実現せずに3年が経過。この間失言を繰り返し、2024年6月の高卒者への不適切発言を巡り、市議から不信任決議案を提出された。上越市政始まって以来の事態に至り、市議会との関係はさらに悪化。新潟県第3の都市のリーダーとして、資質を問う声が上がっている。(5回続きの1)

 秋も深まった10月28日。上越市本町5にある市の文化交流施設「ミュゼ雪小町」に、関根学園高生徒会が発案した高校生のための居場所「サードプレイス」が試験的にオープンした。3月に生徒会が中川市長に面会して協力を求めた結果、市は場所を提供する形で応じた。学校帰りの生徒らが勉強したり、雑談に花を咲かせたりしていた。

 そこへ市長が視察にやってきた。帰り際、生徒に握手を求め、自虐的に言った。「頑張ってください。あまり、うれしくないかもしれないけれど」

 市長と高校には「因縁」がある。

 市長は23年7月、市と県内経済団体との懇談会で市内の私立高校について「レベルがちょっと下の方にある」と述べ、差別的な物言いだと問題視された。市長は学校を訪ねて陳謝した。

 そして24年6月、市議会一般質問の企業誘致を巡る答弁で、上越市内に工場がある大手化学メーカーの社名を挙げ「工場では高校卒業程度のレベルの人が働いている。企業誘致で頭のいい人だけが来るわけではない」と発言し撤回。その後謝罪に追われた。企業や学校関係者の批判を招いたほか、市役所には市内外から抗議の電話やメールが殺到し、市政が一時混乱した。

議会答弁で高卒者に対して不適切な発言をした直後、謝罪する中川幹太市長=6月、上越市議会

▽12月定例会で不信任決議案再浮上?

 就任以来、溝がある市議会とは関係がさらに悪化した。発言の責任を取るため、市議会に提案した市長給料5カ月分全額カットの議案は全会一致で否決された上に、辞職勧告決議案を賛成多数で可決された。

 「職責を全うする」と辞職を事実上拒否する市長に対し、一部市議は9月、不信任決議案を突きつけた。可決されれば市長が議会を解散するか、解散しなければ失職するという法的拘束力があるものだ。賛成少数で否決されたものの「辞職勧告に賛成した議員の思いは、いまも変わらない」(保守系会派代表)状況だ。

 一部の市議は12月定例会で再び不信任決議案を出す方向で調整しており、さらなる混乱も予想される。新年度予算案で公約に関する項目が理解を得られず否決されることも想定され、市長の舌禍は市政運営に暗い影を落としている。

▽節目重なる2025年に“戦々恐々”

 失言とまでは言えないものの「上杉謙信」を「上越謙信」と言ったり、「赤十字(せきじゅうじ)」を「あかじゅうじ」と間違えたりするなど、不安や危うさを感じさせる場面は日常化している。

 自身の発言が問題化することから、市長はコミュニケーションの専門家に複数回指導を受けた。市長は会見で、失言の原因を問われ...

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