
人は何かに心引かれて物を買い、魅力を感じて旅行する。食事や美しい風景、現地での交流も含めコンテンツとなる要素や仕掛けがある。2025年の経済面では、新たな潮流を探る重点企画「NEXTコンテンツ潮流」を展開する。まずは、新潟県の「佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」が世界文化遺産登録となった佐渡と、トキの野生復帰で縁が深く、インバウンド(訪日客)が拡大する兵庫県豊岡・城崎(きのさき)温泉の宿の取り組みから、次の時代を見据えた観光誘客を考える。(2回続きの1)
佐渡・佐和田地区の古民家宿に、欧州などから多くの旅行者がやって来る。
緩やかな傾斜地に立つゲストハウス「長蔵(ちょうぞう)」(佐渡市山田)は、大阪からUターンした春日絵里奈さん(43)が物件を購入し、2018年に営業を開始した。夏を中心に訪れる客の半数がインバウンドだ。
明治初期ごろに建てられた一部2階建ての木造建築。天井高8メートルの玄関土間には黒く太い梁(はり)が延び、奥には伝統的な土蔵がある。座敷は意匠を凝らした建具が彩り、回廊から大佐渡山脈を望める。旧佐和田町の町長を輩出した名家の屋敷だ。

客は宿泊を通して佐渡の風土に接する。いろりを囲んで談笑したり、郷土の料理を味わったりするなどし、数日から1週間の滞在を思い思いに楽しむ。
春日さんは「相手の興味に合わせてコンシェルジュのように接している。金山など観光地を回ったら『次はトレッキングをしよう』などの提案もする」と話す。こうした対応が旅行者の心に響き、国内外にファンがいる。
佐渡観光交流機構のまとめによると、2023年に佐渡市を訪れた外国人客は6430人。24年は「佐渡島の金山」が世界文化遺産に登録され、来訪者の増加に期待がかかる。
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築約200年の古民家を改修した宿泊施設「YOSABEI」(佐渡市三瀬川)。オーナーの仲塚周子さん(40)は「佐渡は自然や食など素朴な良さがある。自分で楽しみ方を見つけられる人には魅力的だ」と話す。
子や孫ら家族連れを中心に年600人程度が利用し、約1割が...