スキーをしたことがあれば、不整地(コブ)を華麗に走破したいと思ったことはないだろうか。記者もその一人。そんな夢をかなえてくれる全国でも珍しいコブ専門のスキースクールが、新潟県湯沢町のスキー場「神立スノーリゾート」にあるんです。校長を務めるのは、モーグルで冬季五輪3大会連続出場の西伸幸さん(39)=東京都=。どんな技術を教えてくれるのか。西さんに話をうかがい、実際にレッスンを受けてコブに挑んでみた。(報道部・奥村直之)
コブの滑りを学べるのは「神立フュージョンバンプスクール(KFBS)」。コブと融合してしまいそうな名称で、いかにもうまくなれそうだ。西さんが考える合理的なコブの滑り方を伝授しており、一般スキーヤーも歓迎してくれる。

記者にとって、モーグルは憧れだ。競技として挑戦したことはないが、単純に「かっこいい」。冬季五輪で最も注目する種目だ。2010年のバンクーバー五輪から3大会連続で出場した西さんにも魅せられてきた。どの選手より気合が入り、とにかく速くて、熱い滑りをする印象。取材で尋ねてみると、「スピードはこだわってました。ターンとエアは採点ですが、スピードは絶対的なものなので」とこだわりを語る。「さすが、プロ」と感じた。
レッスンを受けたのは1月17日。湿った雪になりやすい湯沢地域だが、この日は冷え込みと降雪によってゲレンデはパウダー状態。カチコチの硬いコブでないのがありがたかった。

集合場所に向かうと、西さんが「ようこそKFBSに」と迎えてくれた。「取材ですけど、うまくなりたいです」とお願いすると、「もちろんです。任せてください」と頼もしい。
リフトで上がったら、早速練習を開始した。KFBSの特徴の一つは、滑走時のフォームの徹底だ。足首と膝、股関節をほどよく曲げ、胸椎を引き上げるように胸を起こし、あごも少し上げる「パワーポジション」=写真下=。「常にこのポジションを意識してもらっています」と話す。

この姿勢だが、維持がなかなか難しい。多くのスキーヤーは滑走時、背中に丸みを持たせて体をかぶせ気味にし、あごも引きがち。それだけに、胸を起こす姿勢が新感覚過ぎるのだ。自然体ながらも、どっしりとしたパワーポジションは、「人間の体で大きな筋肉となるお尻が使えるんです」

コブの基本姿勢を教わったので、いよいよ滑走だ。...