
コメ政策を語る元農林水産事務次官の渡辺好明氏=東京都千代田区の全国農地保有合理化協会
農林水産省が備蓄米を最大21万トン放出すると発表し、値上がりしてきた米価の行方が注目されている。新潟食料農業大学(新潟県胎内市、新潟市北区)の名誉学長で元農林水産事務次官の渡辺好明氏(79)は、放出の効果は限定的とみて、コメ政策自体に根本的な変革が必要だと主張する。(東京支社・貝瀬拓弥)
-国が発表した2024年産米の相対取引価格は1月の全銘柄平均で60キロ当たり2万5927円と過去最高値をつけました。現状の米価をどうみますか。
「生産コストを考えれば、1俵(60キロ)2万円から2万5千円は妥当な水準だ。ただ一部の業者間取引で4万円以上になっている。(バブル期の)土地転がしのような投機であり、おかしい。常態化すれば、消費者が反発しコメ離れを招く」
-備蓄米放出の評価は。
「遅きに失した。コメが足りなくなることは23年秋には分かっていた。24年産の作付けが始まる前に備蓄米の放出と生産の拡大を準備しておけば、混乱は避けられた」
「米価は放出で少しは下がるが、生産量を増やさない限り落ち着かないだろう。国は24年産の生産量は前年より18万トン増えたというが、現場の生産者や業者に聞くと、実際の収穫量はもっと少ない。国の調査を行う人員が減り、正確でなくなっているのではないか」
-どうして米価は急騰したのでしょうか。...
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