
全国初の女性1級酒造技能士として長年王紋酒造に勤務した椎谷和子さん=新発田市
2024年12月、酒造りを通して日本文化振興に貢献したとして、文化庁長官表彰を受賞した椎谷和子さん(84)=新潟県新発田市=。王紋酒造(新発田市)で30年以上、酒造りに携わり、全国初となる女性1級酒造技能士の資格も取得した。古くから女人禁制の伝統が色濃かった酒造業界で、ジェンダー平等に大きな功績を残した。「新しい時代の考えを持った先輩たちや仲間のおかげで勤めあげることができた」と振り返る。
椎谷さんは1965年、住み込みで酒造りに携わる蔵人の炊事担当として、王紋酒造で働き始めた。24歳だった。農家に嫁いだ椎谷さんは、幼い娘2人の子育て中だったが「近所の嫁さんたちが外に働きに出始めたころ。自分も外で働いてみようと思った」。家族の理解もあったという。
蔵人たちの仕事を目の当たりにするうちに、やがて憧れを抱くようになった。「自分も酒造りをやりたい」。親方に相談したところ、蔵人が人手不足だったこともあり、みんな喜んで受け入れてくれた。翌年の秋から蔵人として働き始めた。
「男の世界」のイメージが強い酒造業界だが、王紋酒造では椎谷さんを特別扱いすることはなかった。力仕事も男性の蔵人と同じようにこなした。蒸した米を運び、出来上がった酒を絞る。酒造りの工程を一通り担い、初めて自分が造った酒を飲んだ時...
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