【2022/04/29】
5月12日告示の新潟県知事選投開票日まで1カ月となった。現職として2期目を目指す花角英世知事(63)の陣営は、国政与党と一部の野党、県内最大の労働団体である連合新潟までが下支えする万全の体制で臨む。共産、社民両党などの支援を受ける新人の会社役員、片桐奈保美氏(72)は反原発を訴え、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を争点化して浸透を図るとみられる。選挙戦の火ぶたが切られる告示日までは、あと約2週間。決戦前夜の両陣営の動きや内情を探った。
前回知事選に続き全面支援する自民、公明両党に、前回は対立候補を推した国民民主党と連合新潟が新たに加わり、分厚い布陣の花角陣営。選挙実務でひときわ大きな存在感を示しそうなのが、県内各地を地盤とする県議30人を擁し、支部組織を地域、職域に張り巡らせる自民党県連だ。
その自民は、告示日まで2週間余りに迫った4月26日、本格始動した。
「今日は実務者会議。皆さんからも意見をもらい、選挙戦を勝ち抜きたい」。新潟市中央区のホテルに旧市町村エリアや職域ごとに活動する支部の幹部約100人を集めた会議で、県連の小野峯生幹事長が呼びかけた。
ポスター掲示、街頭活動などの具体的な方針や日程を確認した会議だが、冒頭には花角氏を招き、改めて支援を訴えてもらう場面をつくった。「実務の中核を担う人たちに、(知事)本人が顔を見せたことは大きい」。小野幹事長は現場の士気を高めて選挙戦に突入する狙いを語る。
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ただ、県連内には、自民ばかり負担が重いのではないかとの不満もくすぶる。
背景には、知事が特定の政党に寄らない「県民党」を掲げていることに配慮し、各党と連合新潟が支援態勢の名目を推薦より弱い「支持」にそろえたことがある。この外形にこだわらず全面支援する構えの自民に対し、約11万人の組合員を抱える連合新潟は支持の場合、関わる人員を含め活動がかなり限定的になるのが原則だからだ。
「自民がなめられる」。22日、県議会内の会議室で自民県議団が行った非公開の会議では、出席者の一人が不満を訴える声が廊下まで漏れた。終了後、別の県議は「それほど活動しない連合新潟が支援の姿勢を最大限アピールするとなれば、どうにも納得いかない」と本音を明かした。
一方、県連の桜井甚一総務会長は「それぞれがやれることをやれば、それでいい」と割り切る。そこには知事選直後の参院選を見据えて今の“友好関係”を極力保ち、勝利につなげたいとの思惑がにじむ。
自民は国政選挙で野党を支援する連合新潟とは長らく対立関係にある。ただ、自民党本部と連合が距離を縮めるような動きが表面化しているのも事実だ。
「参院選で、せめて敵に回らない関係をつくれないか」。別の県連幹部は連合傘下の民間労組などを念頭にそう語り、今は波風を立てるべきではないとする。
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一方、連合新潟の立ち位置は微妙だ。知事選はあくまで現職を評価して花角陣営に加わった。参院選では従来通り野党の立憲民主党現職の推薦を決めている。
その立民現職が花角氏の対抗馬となる片桐氏の支援を明言していることが、連合新潟の牧野茂夫会長の頭を悩ませている。
片桐氏と立民現職が一体で動き、与野党対決を強調すれば、連合新潟が自民と同じ陣営にいることもクローズアップされ、参院選を前に政権側にすり寄ったと有権者から見られかねないからだ。連合新潟内部に分断を生む恐れもある。
牧野氏は「知事選で与野党対決の色合いが強まるのは好ましくない。知事選と国政は全く別だ」と繰り返し、予防線を張っている。