花角英世氏の応援に立つ、左から高鳥修一・自民党県連会長、志田邦男・公明党県本部代表、上杉知之・国民民主党県連代表、牧野茂夫・連合新潟会長=5月28日、新潟市中央区
花角英世氏の応援に立つ、左から高鳥修一・自民党県連会長、志田邦男・公明党県本部代表、上杉知之・国民民主党県連代表、牧野茂夫・連合新潟会長=5月28日、新潟市中央区

 第22回新潟県知事選は、自民、公明、国民民主各党と連合新潟が支援する無所属の現職花角英世氏(64)が、共産、れいわ新選組、社民各党が推す無所属の新人片桐奈保美氏(72)との一騎打ちを50万票差で制した。大勝の裏では、両陣営を支えた各党や団体が直後に控える参院選に照準を合わせ、それぞれの思惑で動いていた。大差で終わった知事選の舞台裏を探った。

 投開票から一夜明けた30日午前。再選を決めた花角英世氏が、あいさつ回りで真っ先に向かったのは自民党県議団の会議室だった。「本当に力強いご支援とご協力をいただいた。心から感謝申し上げたい」

 自民県議たちは大きな拍手で祝った。「この勢いで参院選だ」。中堅県議は手に力を込めた。

 花角氏は2018年の前回選から約15万7千票増やし、得票率は8割に迫った。圧勝に導いたのは分厚い布陣だ。国政与党の自民、公明のほか、前回は野党共闘候補を推した国民民主、連合新潟が支援した。

 自民にとって特に存在感を増したのが連合新潟だった。県連の小野峯生幹事長は、連合新潟が花角氏支援を決めたことが立憲民主党の自主投票につながったとして「敵を増やさないという意味で連合が加わったことは大きかった」と語る。

 自民県連には、花角氏を支援した態勢を参院選に少しでもつなげたい思惑がある。

 6月22日公示が有力視される参院選の新潟選挙区(改選数1)は、立民現職の森裕子氏と自民新人の小林一大県議らが立候補を予定する。16、19年の参院選で敗れ、全2議席を立民に独占されている自民にとって背水の陣で臨む決戦だ。

 「知事選の構図は参院選でも引き継がれる」。自民が国民民主や連合を抱き込み、野党分断を狙うとされる中、知事選応援で来県した茂木敏充幹事長は断言した。30日の記者会見では「知事選は知事選、打って変わって参院選は参院選とはなりにくい」と指摘。野党の足並みの乱れは参院選まで続くと見立てた。

 自民県議団長の石井修県議は地元新発田市での街頭演説で、小林氏と連合の牧野茂夫会長が並ぶ場面を演出した。「参院選は情報戦になる。こういう絵をつくることが大事だ」と話す。

 しかし、分厚い組織が故の問題も生じた。県議30人を抱える自民は、マンパワーを生かして選挙戦を主導。街頭で小林氏に積極的にマイクを握らせ知名度アップを狙った。

 これに異議を唱えたのは小林氏の推薦問題で自民と一時あつれきが生じた公明だ。「『県民党』を掲げる花角氏の方針に合わない」として、再三、花角氏後援会に抗議。激戦が予想される参院選に不安を残した。

 一方、自民から秋波が送られる連合新潟。参院選では森氏推薦を決めており、牧野氏は「森氏は国会に必要な人物。しっかり切り替えたい」と強調する。茂木氏と街頭演説で並ぶことを固辞し、予防線を張った。

 現職の実績と知名度で大勝した花角氏。ただ自民県連の狙い通りに小林氏がこの勢いを引き継げるかは未知数だ。桜井甚一次期幹事長は「相手候補は知名度でダントツに上回っている。まずは自民としてやれることをきっちりやる」と語った。