ゲーム「ウマ娘」内のアイビスサマーダッシュのタイトルと新潟競馬場

 新潟競馬場では基本的に、格付けがトップ級のレース「GⅠ」は開催されていない。国内GⅠの多くは東京や中山、阪神に京都と、関東や関西の競馬場で行われる。ただ、新潟にはそんなレースに匹敵するほど、日本の最高峰で、唯一と誇れる重賞競走がある。

 GⅢの「アイビスサマーダッシュ」。新潟の競馬ファンにとってのGⅠレースだと勝手に思っている。新潟競馬場が改修され、直線1000mコース(通称:千直)の誕生によって2001年から始まった。今年で25回目を迎える。「アイビス」とは鳥のトキのこと。新潟の夏の風物詩として、すっかり定着したレースを紹介したい。

【前回記事はこちら】
『ウマ娘』も走った⁉夏の新潟 “生徒会長”に“暴君”も

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新潟競馬場の空撮。右上の突き出た場所が直線1000mのスタート地点

「唯一無二」のアイビスサマーダッシュ

 その魅力はもちろん、国内唯一の直線1000mコースで繰り広げられる電撃戦に凝縮される。レース時間は1分にも満たない。中央競馬での最短距離、陸上競技で例えるなら花形の100m走だ。“最速“の競走馬を決める決戦なのだ。

新潟の直線1000mで行われたレース。観客側を馬群が走る=2022年7月

 コーナーがあるレースだと、一般的には競走馬が内側の最短距離を走るのが有利。しかし千直だと、あえて外側の柵に寄って走るのがセオリー。これは、他のレースの影響で荒れやすい内側の芝より、外側のきれいな芝を走る方が速いためだ。ただ、内枠スタートだと大きな距離のロスもあり、馬の個性などにもよるが、上の写真のように割り切って内側のコース取りを選択する場合もある。

 先週の11レース、3歳未勝利戦の千直。今村聖奈騎手が騎乗した10番人気イスラコラソンは2枠3番から内ラチ沿いを選んで勝利。芝の状態がいい開幕週だからか、それとも…。

 純粋なスピード勝負でもありつつ、そんな戦略の妙も面白い「千直」。何よりコース外側を馬群が走るということは、観客の目の前を走るということ。その大迫力に魅了される人は多い。

 新潟県人初の女性ジョッキー、小林美駒騎手(20)もその1人。小学6年生の時に見たアイビスサマーダッシュ。馬が観客の間近を駆け抜けるのを見て「こんなスピードの馬に乗ってみたい」と、騎手を志すきっかけとなったという。

カルストンライトオ(実在馬)とは?

 「ウマ娘」の話はひとまず置いておきたい。実在馬のカルストンライトオの話を先に。この馬こそ、アイビスサマーダッシュを語る上で欠かすことはできない一頭だ。ちなみにオは「王」。馬名は9文字という制限がある。

2002年のアイビスサマーダッシュ。手前がカルストンライトオ

 サニーブライアンでダービージョッキーとなった大西直宏騎手を背に、2002年と04年、2度も勝利している。02年のタイム53.7は、四半世紀近く経った今でも、塗り替えられていない大記録だ。まさに競馬界のウサイン・ボルト。競走馬は時速60km~70kmで走るが、この時の最高速度は75km。200mを9.6秒で走った区間があり、“史上最速”と言われている。

2002年のレース結果はこちら
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2004年のアイビスサマーダッシュ。左手前がカルストンライトオ

 最強馬というよりも「最速馬」。ただ、04年はこのレースでの勝利を弾みに、秋のGⅠスプリンターズステークスを4馬身差で圧勝。堂々のGⅠホースとなった。

2004年のアイビスサマーダッシュ、レース結果はこちら
(JRAホームページ・予告なくリンク先ページが終了する場合があります)

 その一方、果敢に逃げて沈んでいくレースも多く、適性距離は1200mですら長いと言われた。通算36戦9勝。もちろん9勝はいずれも1200m以下のレースだ。新潟競馬場の直線1000mを得意とし、アイビスサマーダッシュは第1回から計4度参戦。負けた年も掲示板は外さず、夏の新潟を沸かせてくれた。韋駄天、直線番長とも親しみを込めて呼ばれる。

 そんな個性的な名馬をモチーフとしたウマ娘がいる。

カルストンライトオ(ウマ娘)とは?

カルストンライトオ       Calstone Light O

生真面目かつクールな佇まい――の、直線番長! 『最高速』を追い求め、その頂に辿り着かんと愚直にストイックに邁進する、猪突猛進系ウマ娘。 1番速ければ誰よりも速い。つまり最高速です! とにかく素直で真っ直ぐなので、感情も行動もなにもかもが率直なタイプ。(公式サイトより)

 真っすぐ、最高速…。ゲーム内で育成してみると、...

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