「指令台」として119番通報を受ける指令管制員の武内奨さん=新潟市中央区鐘木の新潟市消防局

 「エマージェンシーコール」。この春まで見ていたドラマのタイトルでおなじみの言葉が載った取材案内が、新潟市消防局から新潟日報社に届いた。資料には「新人指令管制員に密着できます!」とあった。ドラマの主演も新人指令管制員で、声で命を救うかっこよさに憧れていた。その現場を入社1年目の「新人記者」として直接見ることができる。「その仕事、ください!」と前のめりに伝えた。119番通報はどう救命につながるのか-。指令の現場に出動した。 (報道部・大橋麻衣)

 今回密着したのは、中央区鐘木にある新潟市消防局で指令課に所属する新人指令管制員の武内奨(しょう)さん。取材するのは20歳前半の方かと思っていたが、31歳だという。思わず「新人と聞いたのですが…」と伺うと、「全ての119番通報に対応できるよう、さまざまな救助現場の経験や知識を身につけてから配属される部署なんです」とにこやかに答えてくれた。

 勤務は1回24時間で、出番が3日に1度回ってくるローテーション職場だ。8人一組で回している。

朝のミーティングで今日の役割を確認する消防局員

 密着したのは6月中旬の平日。午前8時15分になると、指令課のミーティングが始まった。ここでは休みの2日間で発生した事案や引き継ぎ事項、その日の仕事分担を話し合う。

 この日の武内さんは「指令台」と呼ばれる役割から仕事が始まった。119番通報をしてきた通報者と会話し、救助隊や警察などに連絡する役割だ。ドラマで見た指令台をすぐに見ることができると喜んだのもつかの間。約30分間、119番通報が鳴りやまない。一つの通話への対応時間は2、3分ほど。次から次へとかかってくる通報に一瞬で指示を出し、すぐ次の通報に対応する現場にあっけにとられていると、へッドホンを渡されて武内さんと通報者のやりとりを聞かせてもらった。

スピード感を持ちつつ、的確に情報を聞き出す武内さん

 「火事ですか、救急ですか」-。最初に聞いたのは「亡くなっている人がいる」という救急通報だった...

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