
「フリーフライト」の事故があったサル山前で革手袋を着け、猛禽類を手に乗せるポーズで立つ菊池晏那。つらい経験だったが今は前を向き飛行再開に備える=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
よく晴れた冬の朝だった。いつものようにトビの風翔(ふうか)を左腕に乗せ、飼育員の菊池晏那(きくち・あんな)(34)は札幌市にある円山動物園の園内でトレーニングを始めた。猛禽(もうきん)類が自由に飛ぶ姿を来園者に間近で見せる「フリーフライト」のための訓練。元気に飛び立ったように見えたのに、しばらくしても戻ってくる気配がない。姿を見失ったサル山の方へ慌てて向かった。
目に飛び込んできたのは、何匹ものサルに取り囲まれ、羽をむしられている痛ましい姿だった。
急いでチームのリーダーに電話をした。「どうしよう。サルにやられています」。頭が混乱し、泣きながら伝えることしかできなかった。
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