「フリーフライト」の事故があったサル山前で革手袋を着け、猛禽類を手に乗せるポーズで立つ菊池晏那。つらい経験だったが今は前を向き飛行再開に備える=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
 「フリーフライト」の事故があったサル山前で革手袋を着け、猛禽類を手に乗せるポーズで立つ菊池晏那。つらい経験だったが今は前を向き飛行再開に備える=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
 菊池晏那が世話をする高齢でつがいのオオワシ。菊池が近づくと警戒する様子を見せた=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
 猛禽舎のオオワシ=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
 飼育されている、飛べないトビ=2025年7月、札幌市の円山動物園(撮影・今里彰利)
 菊池晏那の年表
 タイトルカット

 よく晴れた冬の朝だった。いつものようにトビの風翔(ふうか)を左腕に乗せ、飼育員の菊池晏那(きくち・あんな)(34)は札幌市にある円山動物園の園内でトレーニングを始めた。猛禽(もうきん)類が自由に飛ぶ姿を来園者に間近で見せる「フリーフライト」のための訓練。元気に飛び立ったように見えたのに、しばらくしても戻ってくる気配がない。姿を見失ったサル山の方へ慌てて向かった。

 目に飛び込んできたのは、何匹ものサルに取り囲まれ、羽をむしられている痛ましい姿だった。

 急いでチームのリーダーに電話をした。「どうしよう。サルにやられています」。頭が混乱し、泣きながら伝えることしかできなかった。

 ▽16回受験

 仙台...

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