
黒々とした溶岩が広がる鬼押出し園=群馬県嬬恋村
小さな詩集を1冊携えて新幹線に乗った。向かったのは群馬県の北軽井沢一帯。昨年亡くなった詩人谷川俊太郎さんが幼い時から夏を過ごした場所だ。静かな避暑地を回りながら、今も多くの人に親しまれている谷川さんの姿に思いを巡らせた。
「生れた翌年から、夏になると北軽井沢大学村の小さな家に行く」(「北軽井沢」)。1931年生まれの俊太郎少年は、父で哲学者の徹三に連れられて別荘で過ごす夏がうれしかったらしい。ここで歩いた道が「大好きだった」と、同じ作品の中で振り返っている。
北陸新幹線の軽井沢駅(長野県軽井沢町)の周辺は観光バスが何台も行き交う。にぎやかな駅前から20キロほど北に行けば北軽井沢の中心だが、寄...
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