
昭和21年から身を寄せた奈良県の大和郡山市ではね、いつも腹をすかせていましたよ。行き倒れの人を見るような、飢餓感に満ちた時代だった。
悪ガキだったなあ、ボクは。当時18歳くらいの“親分”がいてね、子分は中学生から小学校に上がっていないのまで15、6人。徒党を組んでた。
「いくぞ!」
親分の合図で畑に行くの。麻袋を持って3人1組に分かれてね。農家の人が昼寝したすきに、根こそぎ盗むんだ。春は桃、夏はスイカ、秋はクリや柿ね。盗賊団だね。町に行くと、盗品を扱う店があるんだ。お金にかえて駄菓子屋に行ってね、そこでも万引してた。
警察には5回お世話になった。更生させようと、警察署で本を...
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