
取材に応じる減胎手術を受けた女性=7月、大阪府
2015年夏、大阪府の女性は、府内のクリニックで不妊治療を続けていた。この日、エコー検査をしていた医師が悲鳴のような声を上げた。
「1、2、3…うそでしょ。ありえない!」
医師の次の言葉を聞いた女性は絶句する。
「妊娠しています。五つ子を」
これまでの治療で使ったのは排卵誘発剤だけ。双子や三つ子といった「多胎妊娠」をする可能性については説明されていなかった。妊娠はうれしいが、まさか5人とは。医師は続けてこう言った。
「全員産んだら、あなた死ぬよ」
多胎妊娠は母子ともにリスクが高い。このため、胎児の数を減らす「減胎手術」を受ける人も少なくない。しかし、日本では手術について一定のルールがなく、大...
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