取材に応じる減胎手術を受けた女性=7月、大阪府
取材に応じる減胎手術を受けた女性=7月、大阪府
裁判所に提出した減胎手術後の女性の腹部写真。30カ所の針跡が残る=女性提供
クリニック側への賠償を命じた2020年12月の大阪高裁判決
女性の自宅にある流産した2人の骨つぼ=女性提供
大阪大で減胎手術を始めた遠藤誠之教授=6月

 2015年夏、大阪府の女性は、府内のクリニックで不妊治療を続けていた。この日、エコー検査をしていた医師が悲鳴のような声を上げた。

 「1、2、3…うそでしょ。ありえない!」

 医師の次の言葉を聞いた女性は絶句する。

 「妊娠しています。五つ子を」

 これまでの治療で使ったのは排卵誘発剤だけ。双子や三つ子といった「多胎妊娠」をする可能性については説明されていなかった。妊娠はうれしいが、まさか5人とは。医師は続けてこう言った。

 「全員産んだら、あなた死ぬよ」

 多胎妊娠は母子ともにリスクが高い。このため、胎児の数を減らす「減胎手術」を受ける人も少なくない。しかし、日本では手術について一定のルールがなく、大...

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