首脳同士がお互いを持ち上げる演出に終始した印象だ。むしろ両国共通の利益を見定め、追求してもらいたい。
高市早苗首相とトランプ米大統領は28日、東京都内で対面では初めて会談した。日米同盟を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」を実現することで一致した。
首相は「日米をより豊かにするため、日米同盟の新たな黄金時代を共につくる」と強調し、防衛力の強化と防衛費の増額に取り組む決意を伝えた。
トランプ氏は両国関係について「われわれは最も力強いレベルの同盟国だ」と一層の関係強化に期待を表明した。
両首脳は大統領専用ヘリで米海軍横須賀基地に移動し、米原子力空母に乗艦して演説した。日米同盟の強固さを示すパフォーマンスといえよう。
安保や経済を含め日米関係全般の共同声明は発表せず、そろっての記者会見も実施しなかった。
両首脳が署名したのは、レアアース(希土類)など重要鉱物の供給、確保の文書と、関税合意で約束した投資履行の文書だ。
米国では来年11月、政権への審判となる中間選挙が行われる。今回は安全保障より、支持者にアピールしやすい経済や貿易での成果を優先したいとの思惑が透ける。
レアアースは電気自動車(EV)のモーターやハイテク製品などに幅広く利用されている。
生産国が中国やオーストラリアなど一部に限られ、市場で圧倒的な地位を占める中国が日米に対する圧力に利用するケースがある。
レアアースを巡り、日米両国は採掘や加工を含む強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)を協力して確立することを目指す。
中国への依存から脱却できれば、両国にとって大きなメリットになるだろう。オーストラリアなどと連携し着実に前進させたい。
関税合意の文書には、5500億ドル(約83兆円)の対米投資に関し「偉大な合意の実施に向けた強い決意を確認した」と記された。
米側は、トランプ氏が任期を終える2029年1月までの投資を狙う。日本側も投資額に見合う利益を得なければならない。投資する案件と金額は、両国間で慎重に検討するべきである。
トランプ氏は首相と共に、新潟市で拉致された横田めぐみさんの母、早紀江さんら北朝鮮による拉致被害者の家族と面会した。
拉致問題解決に向けて「できることをやる。米国は最後まで共にある」と、日本政府に協力する姿勢を示した。
未帰国の政府認定拉致被害者の親世代で、存命しているのは早紀江さんだけである。
トランプ氏は北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党総書記との会談に意欲を見せている。早期に実現させ、被害者の帰国につなげてほしい。













