馬にまたがる和田さん=2025年9月、滋賀県栗東市
 馬にまたがる和田さん=2025年9月、滋賀県栗東市
 リハビリに励む和田翼さん=2018年9月
 阪神競馬場に設置された藤岡康太さんの遺影と献花台=2024年4月、阪神競馬場
 引退レースで騎乗する和田翼さん=2025年8月30日、中京競馬場
 引退馬の施設を訪れた和田翼さん=2025年9月、滋賀県栗東市
 著作を手にする和田翼さん=2025年10月、滋賀県大津市

 2018年7月、24歳だった和田翼さんは病院のベッドで目を覚ました。顔は傷だらけでぼろぼろ。医者に「よく生きていたね」と声をかけられた。

 脳に深刻なダメージを負い、1カ月ほどの記憶が飛んでいた。それどころか、名前を聞かれても分からない。年齢や職業を答えたが的外れ。自分がどう生きていたか、全く覚えていなかった。

 味覚を失い、何を食べても味を感じない。右目で見るとモノが小さく見え、左目は大きく見えた。左右のバランスが非対称で、両目で見るとピントが合わなかった。

 自分は誰なのか。その答えが出たのは約1カ月後。病室でふと我に返った。「なんで俺はこんな場所にいるんや」。それ以降、家族や知人から話を聞き...

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