軍に息子を拉致されたタティ・アルメイダ。今も行方を捜し求めている=2025年8月、ブエノスアイレス(撮影・クエスタ・トマス、共同)
 軍に息子を拉致されたタティ・アルメイダ。今も行方を捜し求めている=2025年8月、ブエノスアイレス(撮影・クエスタ・トマス、共同)
 ブエノスアイレス中心部の「5月広場」で行進する女性たち。半世紀近くにわたり、真相を求める声を上げ続けている=2025年8月(撮影・クエスタ・トマス、共同)
アルゼンチン・ブエノスアイレス

 8月下旬、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある大統領府前の「5月広場」に集まった30人ほどが、塔の周りを時計回りにゆっくりと歩き始めた。メガホンで名前が読み上げられると、参加者たちは「プレセンテ(ここにいます)」と、声を大にして呼応する。掲げられた横断幕には「記憶」「真実」「正義」の文字が記されていた。

 毎週木曜日に行われる「行進」には、白いスカーフを頭にまとった女性の姿がある。1976年のクーデターで成立した軍事政権下で軍や警察によって拉致され、今も行方が分かっていない子どもや孫の消息を求める母親たちだ。

 軍政が集会を禁止し、抗議すれば逮捕される中、母親たちは白いスカーフを手に5月広場...

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