2月24日(火)くもり 今回の長編コンペティション上映作品は7本。私はこのうち5本を鑑賞済み。コンペティションには世界59の国と地域から274本(うち長編部門49本、Indie Box部門225本)の応募があったそうだ。NIAFFへの関心度がうかがえる。

 日本の「トリツカレ男」は昨年劇場公開された話題作。キャラクターデザインとビジュアルディレクターを務めた荒川眞嗣さんの個性を生かした髙橋渉監督の的確な演出がさえる愛の物語に心打たれる。日本のコンペに日本の作品があるのは、やはりいい。☆5

 ブラジルの「ニムエンダジュ」は昨年のANIAFF(あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル)でも鑑賞。先住民と共に暮らし、人生を研究にささげた社会学者の生涯をタニア・アナヤ監督が敬意と少数民族迫害の史実も交え、13年の歳月をかけて描く。題材と作り手双方の人生の不思議に感じ入る。☆5

 「ユース・ファイティング」はポーランドの3DCGでパペット風のキャラクター処理。ヤンチャというには痛い少年時代を監督自身の経験を込め、ソ連崩壊後の時代相を描く。手持ちカメラ風のブレを加えた画面も特徴。☆2

 同じくポーランドの「ディプロドクス〜恐竜とボク〜」は昨年のキネコ国際映画祭でも鑑賞。ユニークな外見の恐竜の子供を主人公に、漫画家(実写)と描かれた漫画(3DCGアニメ)が交錯するメタフィクションで、ラストはとんでもない展開に。☆3

長編コンペティション部門に出品した3監督。左から「ディプロドクス〜恐竜とボク〜」のヴォイテク・ヴァヴチェク監督、「ニムエンダジュ」のタニア・アナヤ監督、1人置いて「トリツカレ男」の髙橋渉監督(2月23日)

 「ジュリエット&ザ・キング」はイランの長編。「ロミオとジュリエット」を下敷きにシェークスピアの亡霊も登場。絢爛(けんらん)豪華な背景とエキゾチックな歌のミュージカルタッチアニメーション。コメディーではあるがイラン王室を舞台にしており深読みも可能な作り。☆3

 ベルギー他の合作「アラーの神にはいわれもない」と、アメリカのSFアンソロジー「アニマノマリー オブザーブ-アブゾーブ-オベイ」は現時点で未見。

個性豊かな7作品がそろった第4回映画祭の長編コンペティション作品(五味さん撮影)

 これほど世界で長編作品が作られる時代はアニメ史においても稀有(けう)といえる。映画祭の貴重な機会に感謝したい。(アニメ評論家)

<著者プロフィル>
◎五味洋子(ごみ・ようこ)群馬県出身。旧姓・富沢。「アルプスの少女ハイジ」「ルパン三世カリオストロの城」などに動画で携わる傍ら、アニドウで上映会やアニメ専門誌「FILM1/24」編集発行を手がける。退職後アニメ評論家として「キネマ旬報」等に執筆、東京アニメアワード一次選考委員等を務める。著書に「アニメーションの宝箱」「未来少年コナン また、会えたね!」など。

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