
宮城県南三陸町職員だった兄翼さんが亡くなった旧防災対策庁舎を訪れた井上彩さん=11日午後2時49分
むき出しの赤い鉄骨を、そっと見上げた。宮城県南三陸町で生まれ育った声優の井上彩さん(34)。町職員だった兄翼(たすく)さん=当時(23)=が亡くなった旧防災対策庁舎に親族と訪れ、花束を手向けた。漫画やアニメがきょうだいの共通の趣味だった。「きっと笑って見てくれていると思う」。活躍を空に誓った。
普段は朗読劇の読み手や海外映画の吹き替えをする。この日は住まいのある東京都から里帰りした。東日本大震災が起きた時刻の午後2時46分、目をつむり、静かに思いをはせた。
2011年3月11日の震災発生当時は東京都の職員。その後、翼さんの志を継ぐかのように町職員となり、復興の仕事に取り組んだ。街の移ろいと翼さんとの思い出に背中を押された。15年がたち、ようやく自らの道を前向きに生きられるようになった。
あの日、大きな揺れを感じた時は都庁にいた。兄はきっと住民と高台に逃げ、避難所設営に追われているだろう。「大丈夫?」と送ったメールに返信はなかった。町の新入職員だった翼さんは、高さ約12メートルの防災庁舎屋上で住民を守るように円陣を組み、...
残り741文字(全文:1208文字)












