多くの対立要因を抱えながらも、対話が継続される見通しとなったことに安堵(あんど)する。二大国は覇権争いを続けるのではなく、協調の道を探ってもらいたい。

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談した。首脳会談は昨年10月以来で、トランプ氏の訪中は1期目の2017年11月に行われて以来となる。

 中国側によると、両首脳は「建設的戦略安定関係」の構築で合意した。習氏は「今後3年かそれ以上の長期にわたり両国関係に戦略的指針を与える」と説明した。

 会談2日目の15日には、中国による大豆などの米国産農産物の購入拡大で合意したとみられる。貿易摩擦緩和のための新たな枠組みの設置も協議した。

 両国間では昨年、お互いが課す関税率が一時100%を超えるなど貿易対立が激化した。その緊張関係から一転、友好ムードで会談が終わったことは歓迎したい。

 注目されたのは台湾問題だ。会談で習氏は台湾が米中関係において「最も重要な問題だ」とし、米側が対応を誤れば、米中関係が「危険な状況に向かう」と警告した。これに対し、トランプ氏は明確な返答を避けたとみられる。

 両首脳間でどのようなやりとりが交わされたのか注視していく必要がある。

 トランプ氏はイラン情勢について、習氏がエネルギー輸送の要衝でイランが事実上封鎖するホルムズ海峡の開放に協力する意向を示したと述べた。習氏がイランに対して軍事装備を供与しない約束をしたとも主張した。

 米側によると、両首脳はイランが決して核兵器を保有してはならないという認識を共有した。

 台湾、イラン、通商などで課題を抱えながらも、両国首脳が歩み寄りの姿勢を見せた背景には、それぞれの国内事情がある。

 トランプ氏は11月に中間選挙を控える。イラン攻撃によるガソリン価格高騰などから、支持率は低迷している。

 中国も国内経済が減速し、若者の就職難などで社会不満がくすぶっている。

 両首脳とも国民を意識し、分かりやすい成果を目指した形だ。

 大国間の緊張や貿易摩擦は地域の安全保障や世界経済に大きな影響をもたらす。再び対立を激化させてはならない。

 懸念されるのは冷え込んだままの日中関係だ。高市早苗首相が国会で台湾有事を巡り「存立危機事態になり得る」と答弁してから半年が経過するが、この間、日中は閣僚級の対話も行われていない。

 米中関係が好転すれば、中国側に日本との関係改善を急ぐ理由がなくなる。米国が日本よりも中国との関係を重視する可能性も否定できない。

 日本政府には日中関係改善に向けた努力が求められる。