停戦合意をふいにしてはならない。非難の応酬でなく、和平への一歩を踏み出すべきである。

 ロシアとウクライナがトランプ米大統領の仲介で合意した3日間の停戦が9日に始まった。だが、双方とも攻撃を続けている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシア軍が前線で停戦を守っていない」と批判した。

 ロシア側も10日、過去24時間に676回の砲撃、6331回の無人機攻撃を受けたと発表した。

 停戦違反を非難し合う展開は、極めて残念である。

 ロシア国防省は、9日の対ドイツ戦勝記念日に合わせ、ウクライナに対する8~9日の停戦を宣言していた。これを受け、ゼレンスキー氏も6日午前0時からの停戦を表明した。

 双方ともに相手国に同調を求めたが、期間がかみ合わなかった。最終的にトランプ氏が仲介し、停戦と、捕虜千人の交換に合意したと発表されていた。

 完全な停戦が実現すれば、4年以上に及ぶロシアによるウクライナ侵攻で初めてとなる。

 合意にこぎつけたこの機会を逃すべきではない。恒久的な停戦へつなげる努力が必要だ。

 停戦は、これまでに何度も不調に終わってきた。

 正教の復活祭などに合わせ、両国がそれぞれ一時停戦を提案することがあったが、相手が受け入れず、戦闘を継続してきた。

 昨年3月には、米国が提案した30日間の全面的な停戦をウクライナは受け入れたが、ロシアのプーチン大統領は応じなかった。

 プーチン氏が今回の戦勝記念日に行った演説は、ウクライナ側の不信感を深めるものだろう。

 「北大西洋条約機構(NATO)によって武装、支援された侵略勢力」とロシア兵らが対峙(たいじ)していると演説し、ウクライナへの侵攻を正当化した。

 侵攻は武力により領土を奪おうとする暴挙であり、正当化は決して許されない。

 ウクライナとロシアは、米国の仲介で和平に向けた3カ国高官協議を開いた時期があったものの、ウクライナ東部ドンバス地域の扱いなどを巡って立場の隔たりが埋まっていない。

 米国の中間選挙をにらみ支持率回復へ手柄を示したいトランプ氏にプーチン氏がつけこみ、交渉がロシアペースで進むようなことがあってはならない。

 しかし米国は今春、各国がロシア産原油を購入することを一時的に認めると発表した。

 ウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁を緩和するものだ。

 世界的な原油高騰を抑える措置とはいえ、ロシアに戦争継続の資金を与えることになる。ウクライナが反発するのは当然だ。

 米国が果たすべきは、和平へ導く真の仲介者となることである。