安心して暮らすため、地域医療の維持が不可欠だ。深刻な医師の偏在解消を優先すべきである。

 人口減で医師数が過剰になる見通しだとして、財務省は大学医学部の定員について「大胆な削減に踏み切るべきだ」と提言した。

 財務相の諮問機関で、有識者でつくる財政制度等審議会の分科会で主張した。

 財務省の分析では、人口当たりの医師数は全国でみると増加傾向で、2029~32年の間に需給が均衡し、その後は過剰になる見通しだという。外来患者数が減少し、人口当たりの診療所数はさらに増加していくとも説明した。

 分科会では、医師の数と医療費には相関関係があるとして「医療費適正化の観点からも削減は重要だ」という意見も出たという。

 このまま人口減が進めばいずれ医師数を見直す必要はあるのだろうが、地方の現状にも目を向けるべきである。

 医学部の定員が減った場合、医師が集中する都市部で適正化が期待できるとしても、本県など地方で医師不足が進みかねない。

 花角英世知事が「大枠のマクロレベルの議論だけでなく、地域間、診療科間といったミクロレベルでの是正措置を一緒にやっていかないと大変な状況が起こる」と危惧したことは理解できる。

 厚生労働省が4月に公表した医師の偏在状況を数値で示す「医師偏在指標」によると、本県は201・7と全国44位で、全国平均の266・8を大きく下回った。

 数値が低いほど不足していることを示しており、1位の東京都の358・6と大きな開きがある。

 本県の医師不足は極めて深刻な事態である。

 県は医学部のある大学に地域枠を設けてもらい、地域枠の学生に修学資金を貸与する施策を続けるなど、長年にわたって医師確保に取り組んできた。

 ただ、抜本的な解決策が見えていないのが実情だ。地方自治体の取り組みには限界もある。

 4月に施行された改正医療法には偏在対策も盛り込まれた。外来医療の医師が多い地域での新規開業を抑制したほか、医療機関の維持が困難な区域で働く医師の手当を増やした。

 医学部定員を削減する前に、より実効性のある偏在対策を取らねばならない。

 診療科の偏在も大きな課題だ。厚労省の医療施設調査によると、産科や婦人科のある一般病院は24年10月1日時点で全国に1245施設あり、34年連続で減少し、統計開始以降で最少となった。

 県内でも医師不足で分娩(ぶんべん)が一時休止された病院があった。

 安心して医療を受けられることは、選ばれる地域になるために必要である。地方の人口減対策としても、医師不足の解消を急がねばならない。