施設運営を持続可能にするため、財政基盤の強化は必要だろう。だが、過度な収益重視には弊害もあることを忘れてはなるまい。
文化庁は国立の博物館・美術館に対し入館料などの自己収入を増やすよう初の数値目標を定めた。
訪日客らの入館料を割高にする「二重価格」導入も促した。収入増を図り、国の交付金への依存度を下げるのが狙いだ。
企画展などの展示事業費に占める自己収入額の割合が40%を下回り「社会的に求められる役割を十分果たせていない」と判断した場合は「再編」の対象とする。
これを受け、博物館などを運営する三つの独立行政法人、国立文化財機構と国立美術館、国立科学博物館は2026~30年度に取り組む中期計画を公表した。
それによると、自己収入額の割合を30年度に65%以上、35年度までに100%に引き上げる。29年度時点で40%を下回れば、館を再編の対象とする。
博物館などの運営費は入館料のほか、国の交付金で賄われている。財務省によると、24年度は収入の半分以上を交付金に依存する館が7割を超えた。
国の厳しい財政状況を踏まえれば、できるだけ交付金に頼らない運営を目指す方向性は理解できる。問題はその手法である。
収益を重視し過ぎると、大勢の来場が見込める人気作品を集めた展覧会ばかりが開催される懸念が拭えない。
長年の地道な研究成果の展示や、創意工夫を凝らした企画を行いにくくなるとしたら、文化的な損失ではないか。
「再編」の意味について、松本洋平文部科学相は「各館の役割分担を見直すことであり、閉館は想定していない」と述べている。
しかし、役割分担の見直しが具体的に何を指すかは明確になっていない。現場が萎縮することはないか心配だ。
二重価格は、訪日客に追加的なコスト負担を求めるものだ。国策として観光立国を掲げる中、適切な手法と言えるのか。
例えば、外国語での解説など具体的なサービスへ適切な対価を求めた方が負担への納得が得られやすいと思われる。
博物館は本来、さまざまな資料を収集したり、保存したりして、社会教育や調査研究を行う機関であるはずだ。
利益を優先する民間のレジャーや観光施設とは根本的に異なり、公共の目標を有していることを改めて確認したい。
文化庁は数値目標の設定に際し、展示以外の教育、研究などの取り組みには必要な国費を確保するとした。当然である。
博物館がこれまで積み重ねてきた活動が途切れてしまうといった悪影響が出ないか、監視していくことも必要だ。
